これまで2年間で,茶園土壌は同じ地質・気象条件下にある隣接圃場・雑木林と比べて土壌有機炭素含有率が高く,炭素貯留量が多いこと,一方整枝残渣の分解に注目すると網目を変えたリターバッグ法により大型土壌動物の寄与が示唆されること等を明らかにした。 最終年度となる2021年度は,以下の2点に注目してさらに研究を進めた。 1つは,茶園土壌で隣接する圃場・雑木林と比べて土壌炭素含有率が高い理由を知るため,土壌有機物の安定化に関与すると言われている非晶質鉱物成分を選択溶解法により測定し(シュウ酸塩可溶アルミニウムAl,鉄Fe,ケイ素Si),土壌炭素含有率との関係を調べた。その結果,これらシュウ酸可溶Al,Fe,Si含有率は,いずれも土壌炭素含有率と正の相関を示した。茶園土壌にはとくにシュウ酸可溶Alが多く含まれ,この画分のAlが土壌有機物と複合体を形成して炭素集積に寄与していると示唆された。ただし,このときのシュウ酸可溶成分と土壌炭素含有率との関係は,茶園とともに同じ地質・気象条件下にある隣接圃場・雑木林等の土壌データも同一線上にプロットされた。つまり,このシュウ酸可溶Alによる炭素集積への寄与は茶園固有のメカニズムではない。一方,茶園土壌と隣接圃場・雑木林とでは,シュウ酸可溶Al,土壌pH,交換酸度の関係性が異なった。ここに茶園土壌固有の炭素集積メカニズムが見いだせるかもしれない。今後さらに詳しく検討する予定である。 2つ目は,リター分解への土壌動物の寄与を確かめるため,季節を変えて同じリターバッグ法で整枝残渣の分解率測定を行った。その結果,とくに分解初期に土壌動物の寄与が大きいことが確認された。ただし,飼育箱でダンゴムシ等大型土壌動物による残渣摂食実験を予備的に行ったところ,どの動物も整枝直後の茶葉をほとんど摂食しなかった。茶園での管理作業に伴う踏み付けの寄与を含めて再検討する予定である。
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