研究課題/領域番号 |
19K06336
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 宗浩 佐賀大学, 農学部, 教授 (50295028)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタン発酵 / 草本系バイオマス / 摩砕処理 |
研究実績の概要 |
微生物処理を行うには,基質として炭素源が重要である。そこで,草本系バイオマスに着目した。これらに含まれるセルロース類は難分解性有機物であるが,細胞接着に関係する構造多糖類は嫌気物処理の炭素源として利用可能であると考えられる。そこで,本研究では,麦をモデル材料として,草本系バイオマスの物理的破壊による嫌気性消化効率への影響を検討した。 試験装置として,有効容積400mlの小型発酵装置を用い,発酵温度は36℃に調節した。種菌は,佐賀大学に設置している160L連続式メタン発酵装置から採取した消化液を用いた。消化液中の浮遊固形物は定性濾紙(No.1)で濾過して除き,濾液のみを発酵試験に使用した。発酵基質は,窒素源として水産加工残差から濃縮製造されたフィッシュソルブル,炭素源としてメタノール(対照区用)及び麦茎葉を用いた。麦茎葉は,ブレンダーによる摩砕処理(M区)と5cm程度へのカット(C区)の2種類の前処理を行った。基質のC/N比は15(C=586g/m3,N=39g/m3)に設定した。 消化試験の結果,メタノールと比べて,麦の消化速度は半分以下であることが確認された。また,総メタン発生量から資化された麦中の炭素源を試算すると,茎葉を摩砕した場合(M区)は35.4%,茎葉をカットした場合(C区)は29.4%を示した。また,麦茎葉の物理的な破砕によるメタン収率の向上が確認された。しかし,消化途中で発酵槽内の茎葉をホモジナイズしても総バイオガス発生量の顕著な変化は認められなかった。また,消化された麦の有機物は50%程度であった。以上より,草本系バイオマスを含むメタン発酵では,消化前に草本を物理的に破砕することでメタン収率が向上するが,消化途中で発酵槽内の残存固形物を破砕しても有意な効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,自治体が運用しているメタン発酵施設の物質及びエネルギー収支の評価に取り組む計画としていたが,現地調査が実施困難であった。また,海外調査も同様に中止とした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果として,消化液を好気処理へつなげるための炭素源の扱いについて知見を得られた。今年度は,高有機物負荷における消化液の好気高温処理条件を明らかにする。また,好気処理後の液体は肥料としての利用を前提としており,肥料特性の解明に着手する。また,昨年度は詳細な現地調査が困難であったが,今年度はコロナの感染防止対策を講じながら,できる限り取り組む方向としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナが原因で,当初計画していたメタン発酵施設を対象とした現地調査が実施できなかった。2021年度は,対象施設と相談しながら,感染防止対策を講じて現地調査を実施する計画とする。
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