研究実績の概要 |
メタン発酵及び液状好気高温発酵の連結条件を明らかにするために,炭素源として草本系バイオマスである麦茎葉をモデル材料とした微生物処理試験を実施し,メタンへの変換効率を明らかにした。また,メタン消化液を基質とした好気処理による液肥化処理を行い,微生物処理に要する熱量を確認し,嫌気及び好気処理の連結条件を検討した。前段のメタン発酵試験は,36℃中温発酵で有効容積400mlの小型発酵装置を用いた。種菌用いた消化液中の浮遊固形物は定性濾紙(No.1)を用いて固液分離し,濾液のみを発酵試験に使用した。基質のC/N比は15 (C=586g/m3;,N=39g/m3)に設定した。麦をC源としたメタン発酵では,メタノール比で約66%の資化率を示し,純メタンの発生率は6.2L/gC(0.28mol/gC)となった。 メタン消化液(TN2500ppm)を液状好気処理へ供試し,炭素源としての麦茎葉添加の影響を検討した。基質のC/N比は25へ調整し,消化液N濃度に合わせて麦茎葉を供試した。好気処理では茎葉の添加量が増加するほど処理温度が高くなる傾向を示したが,外気から2℃程度の上昇に留まり,高温域への遷移は確認されなかった。そのため好気処理は中温域で推移し,アンモニア集積ではなく硝化が促進された。茎葉の添加率が全Cの50%では,処理開始から2日目で硝酸態窒素が140 ppm程度を示したが,それ以降は下降して40ppm程度となった。20%では5日目で140ppm程度へ達し,それ以降下降して40ppm程度を示した。 メタン消化液及び好気処理液を用いた植害試験の結果,消化液は化成肥料同様に標準濃度では十分に使用可能であったが,施肥濃度が上昇すると生育阻害が発生した。一方,好気処理液は,完熟堆肥と類似した肥効を示し,4倍濃度投入でも生育阻害は発生せず,極めて良好な肥効を示すことが確認された。
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