本研究では、農地に設置された営農型太陽光発電設備(以下、設備)が作物の栽培環境に及ぼす影響を調査し、営農型太陽光発電に最適な作物や品種、作付け方法を検討することで、農業と太陽光発電事業を同時に行うための管理方法を確立することを目的とした。具体的には、1)設備下で数種類の作物を栽培する試験、2)設備下に到達する光量を推定するモデルの作成、3)太陽光発電と農業生産の両立を最大化する農業システムの評価モデルの作成を行った。 1)設備下で複数の作物を栽培し、太陽光発電設備の影響を調査した。コマツナ、カブ、ミズナは栽培期間を延長することで収量を確保し、サトイモは乾燥を抑制し同等の収量を得られた。一方、ホウレンソウ、ジャガイモ、オクラは収量が大幅に減少し、適した作物や品種の選択が必要であることが示された。 2)日射量は地域によって異なるため、設備を導入する際には営農地域の光条件と太陽光パネルの密度のバランスが重要である。そのため、日射量データに基づいて設備下の光合成有効光子束密度を推定する計算モデルを、全気候太陽スペクトルモデルを用いて作成した。この計算式を用いることで、対象地域の実際の日射量データを入力し、設備導入前に農地での光合成に有効な光の量を評価することができる。これにより、設備導入の経済性を検討することが可能となった。 3)宮崎県のサトイモ栽培をモデルケースにして、日射量データを使用して特定の地域で設備を導入した場合の具体的な効果を算出するモデルを作成した。このモデルにより、発電量や農作物の生産量、最適な栽培開始時期を予測することができ、農家は設備導入の可否を判断することができる。計算の結果、理想的な収穫時期と収量を確保するためには、栽培開始日を23日早める必要があると推定された。 以上の結果は、食料とエネルギーの生産を両立させる持続可能な農業システムを実現することが期待される。
|