研究課題/領域番号 |
19K06339
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山崎 秀雄 琉球大学, 理学部, 教授 (40222369)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境応答 / D-アミノ酸 / 活性硫黄 / Azolla / ポリスルフィド / 信号伝達系 / 硫化水素 / D-システイン |
研究実績の概要 |
アカウキクサは、環境変化を検知すると根や葉を自切して分離拡散し、栄養生長によって分布域を拡大する特異な性質がある。この環境応答特性がアカウキクサの大量発生と広域分散を可能にしていると考えられる。本研究の目的は、D-アミノ酸によって誘導されるアカウキクサ器官脱離のメカニズムを明らかにし、今後の生物防除・繁殖制御に資する学術基盤を確立する事である。 活性酸素(ROS)や活性窒素(RNS)が植物のストレス応答において、シグナル伝達分子として働いてることが知られている。近年、これら活性分子種に加えて、硫化水素(H2S)および活性硫黄(RSS)も植物ストレス応答に関与している可能性が示唆されている。しかし、植物の硫化水素および活性硫黄の発生機構もシグナル伝達機構も全容は明らかになっていない。 5つの硫化水素供与化合物、Na2S、GYY4137、5a、8l、8oをテストしたところ、5aに顕著な根離脱活性がある事を見出した。ポリスルフィドNa2S2、Na2S3、およびNa2S4添加時においても、既知の化学的誘導物質に匹敵する急速な根の離脱応答が観察された。D-アミノ酸のD-システイン添加時には強い根脱離応答が観察され、異性体のL-システインには直接的な効果は見られなかった。本研究の実施により、D-システインはアカウキクサの根脱離を誘発する生理学的基質である事が明らかとなり、シグナル伝達経路に活性硫黄種が関与している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究計画初年度の最大の課題は、アカウキクサの根脱離応答にD-アミノ酸が関与している示す実験的証拠を得ることであった。D-アミノ酸の一種であるD-システインに顕著な脱離活性が確認できたことは、今後の研究展開を保証するものである。更には、既知の硫化水素供与化合物には根脱離活性が見られず、ポルスルフィド化合物に高い活性が見られたことから、シグナル伝達系には、硫化水素生成そのものよりも、パーサルファイド生成の方が効果が高いことが示されたと考えている。これらの結果は、今後のメカニズム解明に繋がる重要な発見であり、初年度としては予想を上回る進展があったものと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究結果を確かなものとするために、D-システイン添加による硫化水素の発生活性の検出に取り組む。D-システインが硫化水素発生の基質となっている証拠を得るために、経時的な硫化水素の微量測定を実施する。また、他のD-アミノ酸についても同様の試験を行い、D-システインとの比較応答の差より、アカウキクサの根脱離メカニズムの概要(アウトライン)を明らかにする。
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