キチンなどの多糖は、生物が作る再生可能な資源である。本研究では、その有効利用のために、「Paenibacillus属細菌によるキチン分解の制御機構の解明」を行っている。本年度は、キチン分解に関わる遺伝子の発現を制御する機構 (二成分制御系) の解析に関して、下記のことを行った。 (1) 二成分制御系タンパク質の調製 これまでにキチンを酵素によって分解して生じる2糖をPaenibacillus属細菌FPU-7株細胞表層で補足するタンパク質 (キチン2糖結合タンパク質NagB1とNagB2) の解析を通じて、NagB1遺伝子近傍に、キチンの存在を検知すると予想される二成分制御系タンパク質NagS (センサータンパク質) とNagR (レスポンスレギュレーター) の遺伝子を検出している。昨年度は、NagSのセンサードメインのみ (NagS30-294) とNagRの組換えタンパク質それぞれ大量に調製した。本年度は、NagS30-294の立体構造解析を検討し、結晶化条件の探索を行ったところ、微結晶が得られ、予備的なX線回折実験を実施した。今後、結晶化条件の最適化を行う。 (2) 二成分制御系細胞外センサードメインの機能解析 昨年度の解析により、二成分制御系細胞外センサードメインNagS30-294はキチン2糖と直接結合しないことが示唆された。本年度は、NagS30-294とNagB1との相互作用の解析をゲルろ過を用いて行った。結果、NagS30-294はキチン2糖非存在下ではNagB1と複合体を形成しなかったが、キチン2糖存在下でNagB1と複合体を形成した。つまり、NagSは、キチン2糖をNagB1を介して認識することが示唆された。
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