国内のハマエノコロが持つ耐塩性の遺伝的基盤を解明することを目的として、アワ(宮崎県産)とハマエノコロ(神奈川県三浦市城ケ島)の雑種ならびにエノコログサ(京都府京都市自生)とハマエノコロ(京都府京丹後市三津)の雑種にそれぞれ由来するF2分離集団を用いて連鎖解析を実施した。各F2系統を自殖させて得た種子由来の実生を用いて100 mM NaClを含む25%園試処方培養液による栽培を行い、地上部ならびに地下部の乾燥重量の対照区比を指標として耐塩性を評価し、QTL解析を行った。 各集団についてそれぞれ1005個ならびに1004個のマーカーから成る全長2002 cMならびに1701 cMの連鎖地図が構築された。アワ×ハマエノコロ集団では第5染色体に有意なQTLを検出した。エノコログサ×ハマエノコロ集団では第2、第3、第5ならびに第9染色体にQTLを見出した。この結果は、自生地を異にするハマエノコロの耐塩性がそれぞれ独自の遺伝的基盤を有することを示し、海岸域における植物の適応進化の解明に貢献するものである。さらに応用的側面では、複数の耐塩性関連遺伝子座を交配によりアワへ集積することで強力な耐塩性を持つ新規アワ系統育成できる可能性が示され、塩類集積土壌における作物生産の拡大に貢献する成果を得た。 また、ハマエノコロの耐塩性の遺伝的多様性の詳細な把握を目指し、宮崎県で採取したハマエノコロのゲノム解読に着手した。
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