研究課題/領域番号 |
19K06347
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
高橋 利幸 都城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (50453535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微細藻類 / バイオソープション / 元素分析 |
研究実績の概要 |
本研究では、化学的な凝集沈殿法に替わる重金属類の回収法として、微細藻類による生物吸着を用いた方法の開発を目的にした。初年度は、単位容積当たりの使用微細藻類数を増やすため、微細藻類を包括固定した微細藻類カプセルを作製し、微細藻類カプセルによる金属イオンの吸着量を評価した。その結果、金属イオンの吸着自体は確認されたが、微細藻類を包括する包括剤(カプセル)自体も一定量の金属イオン吸着活性を示した。そのため、結果として、金属イオンの吸着に対して、使用した微細藻類の貢献の度合いが明確でなかった。 2年目は、初年度の結果を踏まえ、まずは微細藻類自体の金属イオン吸着活性を明らかにすることに念頭を置き、微細藻類単独での金属イオン吸着能力を評価した。今回、メッキ排水などで多く含まれる硫酸銅溶液や塩化亜鉛溶液を対象に、微細藻類の金属イオン吸着活性を比色定量法で評価した。その結果、添加した金属イオンに対して、銅イオンの場合で8割程度、亜鉛イオンの場合で6割程度の微細藻類への吸着がみられた。また、微細藻類を生きたまま使用した場合と生理活性を低下させた場合(加熱やホルマリン処理など)では、異なる結果が観察された。したがって、生理活性の有無は、金属イオンの吸着活性の安定性に影響することが分かった。また、データ数から信頼性に若干の課題はあるが、銅イオンについては、事前に想定していた通り、微細藻類個体数と吸着量に相関を示唆するデータも得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記載のように、当初の想定と異なり、使用する微細藻類カプセル自体にも吸着挙動があった。そのため、微細藻類単独での実験を検証することとなった。これは、事前に予定していなかった項目である。 上記の直接的に研究に関する内容とは別に、年度当初から新型コロナウイルス感染症対策に係る組織内業務や遠隔授業などに多くの時間がとられ、研究に時間を割くことが容易でなくなった。また、実験を担当する学生が登校できない期間が続き、データ量にも影響した。さらに、新型コロナウイルス対策の影響か、発注した実験試薬や器具の納品に時間を要し、結果として、計画通りのスケジュールで実験できず、研究の進行を遅れさせる要因となった。実際に、「研究実績の概要」で上述した金属イオン(銅イオンと亜鉛イオン)以外の対象も実験を行ったが、定量試薬の入手に時間を要し、途中で中断した実験もあった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究を通して、微細藻類の生理状態により、金属イオン吸着以外の挙動が起きることが明らかになり、また、目的である吸着だけに反応を安定化させる方法も確立できた。今後は、微細藻類に一度吸着した金属イオンを脱離させる方法を検討する。具体的には、金属イオンを吸着させた微細藻類をカラム等に詰め、カラム等に溶離液候補物質を添加することで、金属イオンの脱離が起きるか定量する。 また、金属イオン種による微細藻類への反応性の相違が不明なままである。微細藻類細胞表面の化学処理により、微細藻類の表面荷電を変化させることで、金属イオンの反応性が変化するか評価し、微細藻類のバイオソープションの原理を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用し稼働中の機器の一部が、経年劣化により、部品の一部が故障したり、基盤汎用機器の故障のため新規購入したりなど、予定外の大きな出費が発生した。そのため、論文投稿費用を含め、必要予算の捻出に苦慮した結果、前倒し請求を行うこととなった。 一方で、新型コロナウイルス対策のための移動・行動規制のため、学会出張費などがほぼゼロだった。そのため、想定したよりは次年度使用額を大きく減らすことにはならず、基本的に翌年度使用への大きな影響はない。
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