研究課題/領域番号 |
19K06350
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
大久保 武 茨城大学, 農学部, 教授 (70233070)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | レプチン / C-reactive protein / 摂食 / ニワトリ |
研究実績の概要 |
ニワトリの抱卵期の摂食及びエネルギー代謝の制御機構を明らかにする目的で、初年度は、ウコッケイを用いて異なる生理条件(抱卵及び産卵)及びエネルギー摂取条件(制限給餌)における視床下部及び肝臓のCRP mRNA発現及びエネルギー代謝に関与する種々の遺伝子の発現について解析した。その結果、視床下部におけるCRP mRNA発現は、個体間の差異が大きくRNA-Seqで認められた有意な変化は認められなかった。しかし、肝臓におけるCRP mRNA発現は、抱卵時と同水準の飼料を与えた制限給群において、産卵群と抱卵群に比べて有意に増加する事を新たに見出した。また、このmRNA発現の変化は、レプチン受容体mRNA発現と類似していた。CRPはレプチン情報伝達を変化させることが報告されており、本結果もCRPとレプチンとの相互作用を示唆している。一方、CRPは摂取エネルギー水準に応じて変化することも示されているが、抱卵群と同水準の飼料を給餌した制限給餌群で肝臓のCRP及びレプチン受容体発現が異なっていた。このことは、肝臓のCRP発現は自発的な摂食抑制(抱卵)と人為的な摂食抑制(制限給餌)で異なる応答をすることを示している。 さらに、CRPとレプチンとの相互作用を明らかにする目的で、ニワトリCRP及びレプチンの発現ベクターの構築を目指した。CRPについては、発現ベクターが構築され、培養細胞内での発現を確認している。しかし、レプチンについては、組織からのニワトリレプチンcDNAの増幅に至っていない。ニワトリレプチンの構造の特徴から、PCRによりcDNAを増幅させることが困難な可能性があるために、レプチンcDNAを合成して、発現ベクターに導入することを検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中枢性のCRP発現の変化については、当初実験で得られた結果を再現することができなかった。当初実験の結果が再現できなかった原因は明らかではないが、CRPの脳内局在と採材部位のばらつき等が原因の可能性もあるため、CRPの脳内局在など組織学的解析が急務である。一方、肝臓におけるCRP発現が自発的な摂食抑制にある抱卵群と人為的な摂食抑制の制限給餌で異なることは、抱卵時の低エネルギー適応と関連する可能性がある新たな知見を見出した。 また、CRPとエネルギー代謝に関与するレプチンの相互作用については、主に培養系で実施する予定であるが、レプチンの発現については今のところ成功していない。PCRを用いずに合成したニワトリレプチンcDNAを用いてタンパク質の発現を試み、CRPとレプチンの相互作用の検討を進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、中枢性のCRPの機能を中心に解析する予定であったが、肝臓におけるCRP発現に特徴的な変化を見出した。そのため、中枢性のCRPの発現について、再検討を進めるほか、抱卵中の代謝の変化と肝臓におけるCRPの関係についても研究を進めていく予定である。また、海外の先行研究で、絶食により脳内CRPの発現が変化することが認められている。その研究に従事した研究者とは現在、別の共同研究を進めている。よって、本研究についても共同で進められるよう情報交換を開始する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ニワトリレプチンの発現ベクターの構築が年度内に完了しなかったため、培養細胞を用いた研究が十分に達成できなかったことで、細胞培養に必要な器具や試薬類の購入ができずに余剰分が発生した。また研究成果の発表を予定していたが、年度末開催予定の学会(日本畜産学会及び日本家禽学会)が中止になったため、旅費の執行ができなかった。 令和2年度は、組織からcDNA合成が困難なニワトリレプチンについて、その発現ベクターの合成を外部発注するなど、研究の迅速化を図り、細胞培養による研究を鋭意進める。また、新たに見出した低エネルギーへの適応下における肝臓CRPの役割について、動物実験により明らかにし、その成果は日本畜産学会等の学術集会において発表する予定である。
|