研究課題
本研究は、医学分野で発展してきた心拍変動評価を自律神経活動バランスの生理的評価軸とし、一方、生態学分野で開発された動的体加速度評価を動物の動きを示す物理的評価軸として同時に活用し、さらに他の生理的・物理的評価と統合することで、家畜の健康状態やストレス等を評価する新たな方法として適用できるかを検討することを目的としている。2年次である当該年度は、行動様式の定性的な評価および3軸加速度センサーデータを基にした動的体加速度による定量的な評価を同時に行い、それらの情報を組み合わせることで、肉用牛の健康状態を評価する手法を新たに開発した。なお、動的体加速度について、本来は個体の重心箇所で取得する必要があるため、家畜動物に対しては背部でデータ取得を行うのが通例となっている。それに対し、より機器装着の簡易な首部でも推定が可能であるかを検証するため、肉用牛およびめん羊を用いて、首部での9軸マルチセンサーデータ(3軸での加速度、地磁気、ジャイロセンサーのデータ)から算出した様々な物理的指標と背部での動的体加速度との関係性解析も行った。また、前年度より実施している心拍変動と各種物理的指標との関係性解析では、放牧条件下での肉用牛に対し、ヒト用心拍計測装置およびカスタマイズした電極装着法により心拍間隔(R-R間隔)計測を実施し、得られたデータに対して心拍変動解析を行った。これらの実施内容について、投稿論文1件が国際学会誌へ掲載された。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は新型コロナウィルスの影響などもあり試験実施回数が当初計画より減少したが、2年次計画としていた検討を初年度に一部前倒しで実施できたことや、回数は減少したものの実施した試験においては一定以上のデータ取得が実現できたことから、結果として、進捗状況は当初の計画とほぼ同様の進捗状況であると考えられる。
次年度以降は、当初計画通り、様々な飼養条件下での各種家畜動物を用いたさらなる試験の実施およびデータの収集、解析法の検討を行い、手法の確立を目指す。
(理由)遠隔地での試験実施のための旅費および試験消耗品費などでの使用を予定していたが、新型コロナウィルスの影響などもあり実施回数が当初予定より減少し、その分の経費が次年度使用額として生じた。(使用計画)次年度での試験実施の他、学会参加や論文校正・投稿等での利用を予定している。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Applied Animal Behaviour Science
巻: 235 ページ: 105220~105220
10.1016/j.applanim.2021.105220