本研究は、生態学分野で開発された動的体加速度評価を動物の動きを示す物理的評価軸とし、一方、医学分野で発展してきた心拍変動評価を自律神経活動バランスの生理的評価軸として活用して、他の物理的・生理的評価軸も含め、家畜の健康状態やストレス等を評価する新たな方法として適用できるかを検討することを目的として実施した。 まず初年度には、家畜動物の行動様式と様々な物理的指標としての9軸マルチセンサーデータとの関係性解析を主に実施した。自由行動下のやぎを用い、行動様式ごとにセンサーデータ(3軸での加速度、地磁気、角速度のデータ)がどのように影響を及ぼすかを解析し、さらには機械学習を用いて行動分類情報としてのセンサーデータの利用可能性を明らかにした。また次年度には、行動様式の定性的な評価および3軸加速度センサーデータを基にした動的体加速度による定量的な評価を同時に行い、それらの情報を組み合わせることで肉用牛の健康状態を評価する手法を新たに開発した。なお、より機器装着の簡易な首部の動的体加速度でも同様の評価に利用できるかを検証するため、肉用牛およびめん羊を用いて、首部での9軸マルチセンサーデータから算出した物理的指標と背部での動的体加速度との関係性解析も行った。3年目から最終年度にかけては、取得したデータを基に、3軸加速度センサーデータから算出した動的体加速度による定量的な評価指標および心拍間隔計測に基づく心拍変動評価指標を用いて、暑熱状態や飼料の違いなどの飼養管理要因の変化が反芻家畜のストレス状態に及ぼす影響を評価する分析手法の開発を行い、その結果、アニマルウェルフェア評価に対し、本課題で開発した手法が有効であることが認められた。 これらの実施内容について、複数の国際論文誌および国内論文誌において研究論文として掲載が認められ、現在、さらに投稿論文を作成中である。
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