肉牛の生産現場では、早期肥育技術の導入が検討されている。通常肥育では、一般的に10か月齢~30か月齢まで肥育を行い、肥育期間に穀物飼料を多給する。一方で、早期肥育では、6~7か月齢から肥育期に入り24か月齢まで穀物飼料を多給し出荷する。そのため、下部消化管発達が十分ではない牛は、肥育期に栄養消化不良性の下痢が生じ末梢組織への栄養素供給・利用が増えず、安定的な肉質や産肉性が得られない。そこで、母牛の血中成分の変化が初乳構成成分に与える影響を明らかにするとともに、初乳と移行乳の構成成分が牛の下部消化管発達に与える影響を検討する。 分娩末期(分娩予定日1か月前)から分娩後3日間 における母牛への脂肪酸給与が母牛の血中成長因子およびインスリン分泌変化に与える影響を検討している。解析については従来より時間分解蛍光免疫測定法を用いたホルモンの自家製アッセイ系を開発しており、血中、初乳および移行乳のホルモン濃度測定を行っている。本測定系を用いて初乳の解析を行い、初乳ならびに移行乳中にGLP-2が含有していることを明らかにした。これは、黒毛和牛の初乳に下部消化管発達に関連する物質が含まれていることが明らかとなったととともに、時間分解蛍光免疫測定法により初乳中のGLP-2解析が可能であることも明らかとなった。
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