研究課題/領域番号 |
19K06360
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中村 孝博 明治大学, 農学部, 専任准教授 (00581985)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 体内時計 / 視交叉上核 / 加齢 / 神経回路 / 性周期 / 時計遺伝子 / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
概日リズムは生物が地球上で生存するために獲得・発達させてきた生命の基本機能である。哺乳類における概日時計中枢は脳・視床下部・視交叉上核(suprachiasmatic nucleus, SCN)に存在するが、その時計中枢から出力される時刻情報がどのように各器官系が持つ生理機能に伝えられているか不明な点が多い。本研究者らは加齢変化をモデルとした研究成果により、各生理機能の概日リズムの変調は、SCNからの時刻情報の出力低下やそれに伴う脱同調状態が起因するという仮説に至っている。すなわち、刻一刻と変化しつつ、正確な日内ダイナミクスを制御するSCN機能的出力経路の解明は、広く科学研究に寄与するとともに、健康分野では概日リズムの変調に起因する各種疾患の発生基盤の理解および対策の開発につながり、食糧生産分野では家畜の繁殖・育種の効率化に貢献する。本研究では、概日時計出力様式の解明を主目的とし、マウスを用い古典的なSCN隔離術・自由行動下動物の電気活動リズム記録と光遺伝学的手法などの新しい手法を組み合わせ、この概日時計出力の機能的コネクトームの解明、特に、雌性生殖機能に入力する時刻情報経路の解明に挑んでいる。 これまでに、SCNを隔離した(iSCN)マウスでは、概日活動リズム、脳内神経活動リズムや末梢組織における時計遺伝子発現リズムなどの振幅は低下していたが、概日リズム自体が消失することはなかった。これらのことから、SCNからの神経性出力は概日リズムそのもののを制御していないが、振幅などのリズムの正確性に関わっている可能性が考えられる。また、SCN特異的にAVP神経細胞の機能を停止させると性周期に表出する雌性生殖機能の低下が認められた。iSCNマウスにおいても性周期が乱れることから、SCNのAVP神経細胞の神経出力は雌性生殖機能に重要な役割を果たしていることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、実験①「SCN隔離マウスの行動生理機能リズム:マイクロナイフを用いSCN隔離マウスを作成し、その輪回し活動リズム、輪回し活動リズムに表出する性周期、コルチゾールリズム、末梢組織における時計遺伝子PER2レポーターの発光リズム、無拘束下マウスのin vivoマルチユニット神経発火活動リズム記録」、実験②「SCN内AVP・CAL・VIP細胞機能不全マウスの行動生理機能リズム」を実施した。しかし、COVID-19の影響により、実験②の実施がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、実施が遅れている実験②「SCN内AVP・CAL・VIP細胞機能不全マウスの行動生理機能リズムCre/loxPシステムを用い、SCN内AVP・CAL・VIP細胞特異的にVgatを欠損させるマウスを作成し、行動生理機能リズムを測定する」を実施するとともに実験③「SCN内AVP・VIP細胞OFFによる雌性生殖機能の解明」も並行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19による活動制限により、実験実施が遅れているため、次年度使用額が生じた。
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