研究課題
概日リズムは生物が地球上で生存するために獲得・発達させてきた生命の基本機能である。哺乳類における概日時計中枢は脳・視床下部・視交叉上核(SCN)に存在するが、その時計中枢から出力される時刻情報がどのように各器官系が持つ生理機能に伝えられているか不明な点が多い。正確な日内ダイナミクスを制御するSCN機能的出力経路の解明は、健康分野では概日リズムの変調に起因する各種疾患の発生基盤の理解および対策の開発につながり、食糧生産分野では家畜の繁殖・育種の効率化に貢献する。本研究では、概日時計出力様式の解明を主目的とし、マウスを用い古典的なSCN隔離術・自由行動下動物の電気活動リズム記録と化学・光遺伝学的手法などの新しい手法を組み合わせ、この概日時計出力の機能的コネクトームの解明、特に、雌性生殖機能に入力する時刻情報経路の解明に挑んでいる。これまでの結果として、SCNを隔離した(iSCN)マウスでは、概日活動リズム、脳内神経活動リズムや末梢組織における時計遺伝子発現リズムなどの振幅は低下していたが、概日リズム自体が消失することはなかったことが分かった。これらのことから、SCNからの神経性出力は概日リズムそのもののを制御していないが、振幅などのリズムの正確性に関わっている可能性が考えられる。SCN特異的に脳内のバソプレッシン(AVP)神経細胞の機能を停止させると性周期に表出する雌性生殖機能の低下が認められた。この動物にアデノ随伴ウイルスによる機能復元実験を行ったところ、野生型の動物同様の正常な性周期が認められた。さらに、AVP特異的に化学・光遺伝学を用いSCNのAVP神経細胞のみを不活性化させると性周期が乱れることが明らかになった。これらの結果と、iSCNマウスにおいても性周期が乱れることから、SCNのAVP神経細胞の神経出力は雌性生殖機能に重要な役割を果たしていることが示された。
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