研究実績の概要 |
ウシ黄体における副腎皮質ホルモン合成およびその効果を調べるために顆粒層細胞細胞を採取し、in vitroで黄体化させる系を用いて一連の実験を行った。プロジェステロン(P4)からコルチゾール/アルドステロンへの合成を仲介する2つの酵素(CYP21A2, CYP11B1)の発現はほとんど認められず、これらのホルモンの合成も認められなかった。一方で黄体化した細胞ではコルチゾンをコルチゾールへと変換する糖質コルチコイド活性化酵素(HSD11B1)とその受容体(GR)の発現が比較的高いレベルで認められた。非活性化酵素(HSD11B2)や鉱質コルチコイド受容体(MR)の発現は低かった。高濃度のプロジェステロン(P4)によりHSD11B1の発現とコルチゾンからコルチゾールへの変換が阻害された一方、HSD11B2の発現が上昇した。コルチゾールの培地への添加はP4合成を仲介する2つの酵素(CYP21A1, HSD3B1)の発現とP4の合成を増加させると共に、黄体化の初期マーカーであるPTX3、VNN2、RGS2の発現を増加させた。以上のことから黄体化顆粒層細胞ではコルチゾールとP4の間に互いを調節するフィードバック機構が存在することが明らかになった。 成熟期間中の副腎皮質ホルモンが受精、およびその後の発生に与える影響についてIVM/IVF/IVCの系を用いて調べた。排卵前の卵胞液中に存在すると思われる濃度のコルチゾール(100 ng/ml)とアルドステロン(500 pg/ml)のIVM培地への添加は、卵割率、桑実胚率、胚盤胞率に明確な影響は与えなかった。
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