研究課題/領域番号 |
19K06367
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
塚原 直樹 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 特任助教 (00712704)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カラス / ディストレスコール / 鳴き声 / 鳴き真似 / playback実験 / 種差 / 地域差 / 季節性 |
研究実績の概要 |
カラスが恐怖を感じた時に発するディストレスコールという鳴き声がある。ディストレスコールをスピーカーで再生すると忌避行動が誘発されることがわかっている。本研究では、複数種のカラスのディストレスコールや、ディストレスコールの音響的特徴を変化させた音声(デジタルでの加工や鳴き真似)を用意し、国内外の様々な地域や異なる種のカラスに聞かせ、忌避行動が誘発された音声とそれ以外を比較することで、忌避行動の誘発に重要な音響的特徴を炙り出すことを目指す。 今年度は以下の成果を得た。北海道・青森・宮城・福島・栃木・埼玉・東京・神奈川・千葉・新潟・富山・石川・福井・長野・愛知・三重・熊本・沖縄において、それぞれの地域に住むカラスにディストレスコールを再生し、反応を観察した。地域や季節、周辺環境、個体ごとに警戒行動の程度に差がある上、鳴き返し等の反応があることが確認できた。今年度は特に群れの反応とその持続性に着目した。八戸市、会津若松市、深谷市、勝浦市、新潟市、福井市、熊本市において、長期的な群れの行動誘導に成功した。これらの地域の多くは、ディストレスコール等を再生することで、特定のエリアへの飛来が軽減するものの、地域全体からの移動は確認できなかった。しかし、熊本市において、1箇月程度の音声の再生により、中心市街地の広範囲への滞在がなくなり、離れた山地へねぐらを移すことが確認された。これは熊本市に飛来するカラスが大陸から渡るミヤマガラスが大半であることから、多数による集団行動を基本とするミヤマガラスゆえに、市街地から郊外への大規模な誘導が成功したものと思われる。またこれらの実験から、忌避行動の誘発にはディストレスコールに加え、警戒時に発する鳴き声を組み合わせることが重要であること、対象種により、より忌避行動を引き出す音声パターンが異なることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響により、一部研究が滞っていた部分があったものの、研究協力者等の協力により順調に進展している。予定していた海外での鳴き声の収録や実験は実施できなかったが、国内の多数の地域での鳴き声の収録とディストレスコールを再生した際の反応を調べることができた。また今年度は、特に秋から冬にかけて長期間試験を実施し、音声に対するカラスの忌避行動の持続性を確認することができた。これまでの成果の一部はオンラインでの学会発表を行うとともに、NHK出版『カラスをだます』を出版し、文一総合出版『BIRDER』や緑書房『臨床獣医 』など複数の雑誌において公表した。以上より、当初計画通り実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2021年度は、これまでの実験で予想できるディストレスコールの音響的特徴の重要な要素について、複数の鳴き真似した音声や加工音声を使って明らかにすることを目指す。また、異なるカラスの種や国内外の様々な地域、環境、季節などでの反応の違いを整理する。さらに、カラスが多数飛来する場所において、音声を使った行動誘導を行い、長期的に反応を確認するといった被害現場での実践的な実験を実施する。また、これまでの成果について学会誌へ投稿するとともに、一般向けの雑誌やメディア等を通じて、成果の公表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、予定していた出張等が実施できなかったため。
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