X染色体不活化に関わるXIST遺伝子の発現調節機構に着目し,体細胞クローン牛および非クローン牛の各種臓器(心臓,肺,肝臓,脾臓,腎臓,空腸,骨格筋)からゲノムDNAを抽出し,バイサルファイトシーケンス法を用いてXIST遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態を解析した。その結果,メスの個体ではメチル化状態は臓器・個体によりかなりの変動があったものの,平均するとクローン牛と非クローン牛間で優位な差は検出できなかった。また,オスの個体は数が少なかったものの,すべての個体・すべての臓器で非常に高度なメチル化状態を維持している。X染色体不活化はメスに特異的な現象であり,XIST遺伝子はX染色体不活化の初期段階に必須なnon-coding RNAであることが知られていることから,オスではXIST遺伝子がすべての臓器で高度にメチル化されており,XISTの発現が抑制されていることが確認できた。一方,メスでは半数のX染色体がランダムに不活化されているが,今回用いたサンプルからはRNAは回収していないため,メチル化と発現調節については,以下の通り培養細胞を用いた研究を行った。
種々のウシ培養細胞に対してDNAメチル化阻害剤である5-aza-2-deoxycytidineを添加し,XIST遺伝子の発現状態およびDNAメチル化状態を解析したところ,一部の細胞株(オス)において,XIST遺伝子の再不活化およびDNAメチル化の低下が見られたことから,ウシにおいてもDNAメチル化がXIST遺伝子の不活化に必須の役割をしていることが示唆された。
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