研究実績の概要 |
ウシ新規父性インプリント遺伝子の候補遺伝子を6遺伝子同定し、プライマーを設計し、ウシの各臓器・細胞からRNAを抽出し、RT-PCRを行った。発現が確認できた遺伝子について、配列情報の確認およびプロモーター近辺のCpG islandの探索を行った。
また、non-coding RNAでありX染色体不活化に必須の因子であることがこれまでの研究から知られているXIST遺伝子についての解析を行った。XIST遺伝子の発現はXIST遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態に依存し,XIST遺伝子が発現していないオスの細胞では高メチル化状態にある。そこで,XIST遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態に着目し,ウシにおける発現制御機構を明らかにすることを目的として実験を行った。オスのウシ細胞株(MDBK:ウシ腎臓由来細胞株)にメチル化阻害剤である5-aza-dCを0, 1, 5, 10 uM添加し4日間培養後,ゲノムDNAおよびRNAを抽出した。ゲノムDNAはバイサルファイト処理しXIST遺伝子プロモーター領域のDNAメチル化状態をバイサルファイトシーケンス法によって解析した。RNAからcDNAを合成し,XIST遺伝子およびX染色体上に存在する複数の遺伝子についてその発現状態をPCR法により解析した。5-aza-dC処理により,生細胞数は用量依存的に有意に低下した。XIST遺伝子の発現は10 uM添加群でのみ観察され,DNAメチル化レベルは75%から69%まで低下していた。X染色体上に存在するPGK1,ZFX, G6PDHの発現に変化は無かったことから,オスの体細胞でXIST遺伝子の発現が誘導されても,それをトリガーとしたX染色体不活化は起こっていないことが示唆された。
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