研究実績の概要 |
肉用牛畜産経営において肥育素牛となる子牛を生産する繁殖雌牛の生産性、すなわち子牛を産み育てるための繁殖能力は産肉能力に加え重要な能力である。この繁殖能力の1つである凍結精液による人工授精受胎率の低下要因となる遺伝子多型を探索し、人工授精受胎率向上を目指した知見を得ることを目的として実施している。 1.現存していない供試牛のゲノムサンプルについて、人工授精回数が多いものについては今後の高密度SNPチップによる多型解析に備え、全ゲノム増幅によるサンプル量の確保の可能性について検討した。全ゲノム増幅プロトコールを確立し、供試牛21頭については既存のPCR-RFLP法により全染色体の増幅が確認できた。 2.宮崎県黒毛和種集団における凍結精液供給を担っている宮崎県家畜改良事業団の協力を得て、県下の大規模黒毛和種繁殖農家における遺伝子多型の受胎成績に及ぼす影響を解析に先立ち、予備検討を行った。その結果、半きょうだい関係にある種雄牛に加え全きょうだい関係にある種雄牛を2組について受胎成績に大きな差異を確認した。 これらを含む10頭の種雄牛について、Infinium BovineHD BeadChip(Illumina, Inc., CA, USA)による網羅的SNP解析を行った。解析の結果、BeadChipに搭載されている777,962 SNPsのうちMinor Allele Frequency5%以上の504,956 SNPsが確認できた。このうち1,762 SNPsがアミノ酸置換を伴う遺伝子多型であった。上記全きょうだい関係にある種雄牛2頭ではアミノ酸置換を伴う38 SNPsが異なる遺伝子型であり、これらは受胎成績に影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に計画していた内容のうち、現存しない供試牛のゲノムサンプルの確保について、全ゲノム増幅プロトコールを確立し、供試牛21頭については既存のPCR-RFLP法により全染色体の増幅が確認できた。 また、全きょうだい間の初回人工授精受胎率に5%水準で有意差が認められる種雄牛を含む10頭の種雄牛について、Infinium BovineHD BeadChip(Illumina, Inc., CA, USA)による網羅的SNP解析を行った。解析の結果、BeadChipに搭載されている777,962 SNPsのうち1,762 SNPsがアミノ酸置換を伴う遺伝子多型であった。受胎率に5%水準で有意差が認められる全きょうだい種雄牛2頭でアミノ酸置換を伴う38 SNPsが異なる遺伝子型であることが確認でき、これらは受胎成績に影響を及ぼす可能性が高いと考えられる結果が得られた。
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