研究課題/領域番号 |
19K06373
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
小林 正之 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (50211909)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホメオタンパク質 / マウス / 初期発生 / 細胞分化 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
1. 本申請者は、マウス胚より新規転写因子EGAM1ホメオタンパク質群 (3種) を発見した。本研究の目的は、胚発生における当該タンパク質群の本質的な役割と遺伝子発現調節メカニズム、組織形成との関連について具体的な例を示すことにより、胚発生や細胞機能を制御する新たな分子基盤として統合的に理解すること、である。これにより、子宮への胚着床の安定性とその後の流産との関連を追及するための研究基盤を確立する。令和2年度は以下に示した成果を得た。
2. 当該タンパク質群による多能性の獲得機構について解析する:マウスiPS細胞の誘導における,当該タンパク質群の影響を検証した。山中4因子に当該タンパク質群を1種ずつ加え,マウス線維芽細胞に同時に遺伝子導入し,iPS細胞の誘導効率を比較した。その結果,対照(山中4因子+コントロールベクター)に比較して,EGAM1N発現ベクターまたはEGAM1C発現ベクターを同時に遺伝子導入した場合,iPS細胞の誘導効率が有意に向上した。また,ウシiPS細胞の誘導に必要な遺伝子群と発現ベクターを構築した。また,2018年にウシES細胞の樹立に関する原著論文が海外の研究グループにより発表されたことより,その追試に着手した。
3. 当該タンパク質群と組織形成との関連について、in vitro胎盤形成モデル系を構築することにより解明する。:これまでの研究成果により,EGAM1NもしくはEGAM1Cを強制発現させたES細胞からTS細胞に酷似した細胞(分化転換TS細胞)が得られている。一方,分化転換TS細胞は継代培養することができないため,細胞特性を詳細に調べることができなかった。令和2年度は,得られた分化転換TS細胞の培養条件を検討した。その結果,Wntシグナル阻害剤XAV939とアクチビンA ,FGF4を添加した培養液を用いることにより,継代培養することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスiPS細胞の誘導技術を応用した研究により,当該タンパク質群と多能性獲得機構との関連を解明ことができた。また,分化転換TS細胞の継代培養条件を明らかにすることができた。これにより,分化転換TS細胞の詳細な細胞特性を解明する研究基盤を確立することに成功した。ただし,分化転換TS細胞の特性について,次年度以降も更に詳細に検証する必要がある。所期の目標設定に照らしてみて,これらの進捗状況はほぼ適切である。
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今後の研究の推進方策 |
1.EGAM1ホメオタンパク質群による多能性の獲得機構について,マウスiPS細胞の成立過程,ウシiPS細胞の成立過程をモデルとして精査する予定である。 2.当該タンパク質群と胎盤形成との関連については,分化転換TS細胞について,その細胞特性・分化特性を精査する予定である。特に,エピゲノム状態がTS細胞型に変化しているのか,重点的に検証したい。これにより,胎盤前駆細胞の形成と当該タンパク質群の関連について,より直接的な知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度は,遺伝子発現抑制法を用い,マウス胚にて当該タンパク質群の発現を抑制することにより,胚発生への影響を検証する予定だったが。一方,2018年に海外の研究グループがウシES細胞の樹立に関する原著論文を発表したため,急遽,その追試実験に着手する必要が生じた。そのため,当初予定していた遺伝子発現抑制実験に着手できず,R3年度に当該実験を実施する必要が生じたため。
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