研究実績の概要 |
2021年から2022年度の2年間、宮崎県の9市町村の109の乳用牛、肉用牛およびそれら混合飼育農家にて耳組織からの牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)の遺伝子の検出を行った。2年間で合計1,998頭の検査を実施し、そのうち、2021年度は824頭中10頭(陽性率1.23% (95%信頼区間: 0.47-1.99%))および2022年度は1,174頭中5頭(陽性率0.43% (95%信頼区間:0.05-0.80%))が陽性であった。本地域におけるBVDVの浸潤は、昨年実施した抽出県での有病率と大きな違いは認められなかった。 広範な地域で実施したが、発生は複数の市町村の農家で発生しているものの、広範囲な感染が確認されたわけでもなく、また農家の種類においても、乳用牛飼育農家と混合飼育農家の2種類で確認された。生体材料採取と同時に行ったアンケート調査の結果では、一般的にこの地域における市場や農場の利用はそれほど高くはないことから、BVDVの伝播はそれほど広範にならないことが予想される一方で、今後、中ないし大規模流行が確認された場合には、動物の移動以外の要因が関係しうることが示唆される。 また、発生農場の詳細を見ると、BVDVの検出は同一農場でも確認されていることから、発生後の対策が十分ではないことが予想される。今回の結果では、発生後に同一の動物移動ルートによって感染牛が持ち込まれた可能性を評価することができなかった。このような可能性についても引き続き検討が必要だと考えられる。 今回調査を実施した地域における牛ウイルス性下痢に対するワクチンの接種率は高くはなかったが、その一方で有病率は現時点の日本のほぼ平均程度だと考えられる。ワクチン接種率以外に否定的に働く要因が存在してことが示唆され、今後このような要因の推定が求められる。
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