研究課題/領域番号 |
19K06379
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中牟田 信明 岩手大学, 農学部, 准教授 (00305822)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ホルモン受容体 / フェロモン / 嗅覚器 / カメ / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
1)性フェロモン受容体候補遺伝子の発現解析:これまでに行ってきたカメの嗅覚器における嗅覚受容体遺伝子の発現解析で見出された性フェロモン受容体候補遺伝子について、それらの発現をRT-PCRとin situハイブリダイゼーションによって詳細に解析した。実験にはミシシッピアカミミガメを用いた。組織の採取は年に4回(3、6、9、12月)行い、全ての個体は甲長、体重、性別を記録した後に安楽殺した。 2)嗅覚器における性ホルモン受容体遺伝子の発現解析:カメの嗅覚器における嗅覚受容体の発現や嗅覚受容細胞の機能に及ぼす性ホルモンの影響を明らかにするため、カメの嗅覚器における性ホルモン受容体の発現を解析した。実験にはミシシッピアカミミガメを使用した。一部の個体からは嗅覚器を採取してRNAを抽出し、RT-PCR解析に用いた。他の個体からは嗅覚器のパラホルムアルデヒド固定凍結切片を作製し、in situハイブリダイゼーション解析に用いた。 in situハイブリダイゼーションによって、アンドロジェン受容体、エストロジェン受容体、およびジェスタージェン受容体のうち、AR、ERアルファ、PR、およびPAQR9は嗅覚受容細胞に、PGRMC1は嗅覚受容細胞と支持細胞にシグナルが観察された。一方、ERベータ、GPR30、およびGPRC6Aについては、RT-PCRによって増幅できたが嗅上皮にシグナルは観察されなかった。性ホルモンの核受容体と膜受容体の発現が示されたことによって、カメの嗅覚器における嗅覚受容体の発現を性ホルモンが直接的ないし間接的に制御することや、嗅覚受容細胞の活動調節に性ホルモンが関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カメの嗅覚器における性フェロモン受容体候補遺伝子の発現については、2019年9月に開催された日本解剖学会第65回東北・北海道連合支部学術集会と2020年1月に開催されたInternational Symposium on "Environmental Response Mechanisms in Plants and Animals" において、それぞれ「カメの嗅覚器におけるTRPC2発現細胞の局在」、「Distribution of cells expressing vomeronasal receptors in the olfactory organ of turtle」と題して発表を行った。 一方、カメの嗅覚器における性ホルモン受容体遺伝子の発現解析については、2020年3月に開催された第125回日本解剖学会総会・全国学術集会において「カメ嗅覚器における性ホルモン受容体の発現解析」と題して発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によってカメの嗅覚器における性ホルモン受容体の発現を示唆する結果が得られた。しかし、RT-PCRやin situハイブリダイゼーションはmRNAレベルの解析であるため、それらがタンパク質に翻訳されて実際に受容体分子として存在しているのか示すことは出来ない。そこで本研究では次にタンパク質レベルの解析を行って、受容体分子が実際にカメ嗅覚器で発現していることを確かめる。 具体的には、エストロジェンレセプター・アルファ(ER alpha)およびベータ(ER beta)、プロジェステロンレセプター、アンドロジェンレセプター、プロラクチンレセプター等の核受容体や、PGRMC1、GPR30、PAQR9、GPRC6A等の膜受容体に対する抗体を用いて免疫組織化学的解析を行う。それによって、各ホルモン受容体分子がカメ嗅覚器に発現しているか、発現しているとしたら、どこに局在しているのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務日程の変更に伴い人件費と試算額との間に差額が生じたため次年度使用額が生じた。翌年度分の人件費と合わせて使用を計画している。
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