研究実績の概要 |
反芻家畜の研究モデルであるヤギを実験動物として用い、ニューロキニンB受容体作動薬の繁殖機能に対する作用を検証することを目的とする。本年度は昨年度と同様の実験モデルにおいて排卵後の黄体機能におよぼす薬理作用を検証した。発情周期を回帰するシバヤギの黄体期(発情確認後7-10日)にB21-750(0 nmol, 1000 nmol, 5000nmol)を静脈内に投与した。投与開始2時間前より10分間隔で8時間の頻回採血を行い、血中プロジェステロン濃度を測定した。その結果、投与後における用量依存的な血中プロジェステロン濃度の上昇が認められた。昨年度の成績を精査したところB21-750は黄体期においては黄体形成ホルモンに対する有意な刺激作用が認められなかったことから、発情周期の黄体期において、B21-750は、黄体形成ホルモン分泌を介さずに直接黄体に作用し黄体機能を刺激していると考えられる。したがって、交配後のこの薬物の投与は血中プロジェステロン濃度を上昇させ、家畜の受胎率の向上につながる可能性を示唆している。また、本課題では、B21-750の腟内投与が臨床現場への普及を促すために有効であると想定している。ヤギでの成果を産業動物である牛に応用することを念頭におき、腟内に分泌される子宮頸管粘液(CVM)中の多形核好中球および13,14-dihydro-15-keto-prostaglandin F2α(PGFM)と受胎性との関係を調査した。その結果、人工授精時においてCVM中の多形核好中球数が多いグループではPGFM濃度が有意に低く、受胎率が有意に低かった。人工授精時に腟内から得られる生殖情報をモニターすることが受胎性の向上に有用であり、B21-750腟内投与の有効性を判断する所見としても活用できると考えられる
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