研究実績の概要 |
本年度も昨年と同様に症例の収集を行った。糸球体疾患が疑われ、腎生検もしくは病理解剖の適応となった症例は犬で4症例、猫で8症例と例年よりも多かった。解析のためには、5種類の染色(ヘマトキシリン・エオシン(HE)、過沃素酸シッフ(PAS)、過沃素酸メセナミン銀(PAM)-HEおよびマッソン・トリクローム(MT)染色、コンゴ・レッド)による光学顕微鏡観察、新鮮凍結切片による蛍光抗法(IgG, IgA, IgMおよびC3)、透過型電子顕微鏡観察を実施した。解析の結果、犬では1例が免疫複合体性糸球体腎炎、3例が巣状糸球体硬化症による非免疫複合体性糸球体腎炎と診断された。巣状糸球体硬化症の犬の1例では、これまで犬では報告がないメサンギウム融解が顕著であった。猫の8例は過密多頭飼育の家系および同居の猫であり、以前より遺伝性のアミロイド腎症の追跡を行っている。この猫の家系については現在も解析中である。 犬の糸球体疾患に関する免疫組織化学的解析については、サイトケラチン、ビメンチン、α平滑筋アクチンについて解析がほぼ終了した。結果として、犬の糸球体疾患では、免疫複合体性、非免疫複合体性にかかわらず、尿細管間質障害の進行に上皮間葉転換が関わることが推察された。現在、さらに定量的解析を進めている。また、次の解析テーマである糸球体疾患の進行に伴うサイトカインの関与についても解析を始め、現在はTGF-betaについて解析を行っているところである。 さらに、これまで収集した犬の症例の中で未熟糸球体が顕著な異形成腎についてレニン、nNOSに関する解析を行い、その結果を学術論文として発表した。
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