今年度は鶏壊死性腸炎の直接的な標的細胞である鶏腸管上皮細胞の初代培養を試み、G型菌による腸管上皮細胞での炎症反応を直接的に解析することにより、鶏壊死性腸炎発症のメカニズム解明を目指した。 17日齢の発育鶏卵小腸を細断後、1 mg/mL collagenase typeⅠで消化した。DMEM/Ham's F12 にInsulin、Heparin、Epidermal Growth Factorおよび 2.5% FCSを加えた培地で37℃条件下でcollagen-coated plate上で培養した。 分離・培養した腸管細胞を位相差顕微鏡下で観察した結果、明確に上皮様形態の細胞が確認できる一方で、紡錘形の線維芽細胞の混入が多くみられた。また、位相差顕微鏡下による目視で確認を行い、分離及び培養に関して様々な条件検討を行ったが、分離率は最も良くて上皮細胞:線維芽細胞=5:5であった。なお、線維芽細胞は単体で散在しているのに対して、上皮細胞は各細胞が密に接着しているため、この比率は、主観的判断に基づく。この状態でサイトカイン発現をrealtimePCRで測定しても上皮細胞だけではなく線維芽細胞から分泌されるサイトカインも検出してしまう可能性があり、サイトカイン誘導分析は実施しなかった。MTS法で致死率を測定した結果、初代腸管上皮細胞のみを培養した群より、G型菌と混合培養した群のほうが吸光度は高く、細胞障害が誘導されていた。 今後、鶏腸管上皮細胞の分離培養法が確立され、G型菌との反応、さらに鶏壊死性腸炎の発症に深く関わるコクシジウムとの混合培養など、さらなる研究が進むことで、鶏壊死性腸炎発症のメカニズムが解明されることを期待する。
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