研究課題
癌組織は自己複製能、多分化能を持つ癌幹細胞を根源とした不均一かつ多様な細胞集団を形成し、癌幹細胞は癌発症、再発、薬剤抵抗性に重要な役割を果たしている。犬の乳癌は、ヒトや猫とは異なり、筋上皮細胞増殖および骨・軟骨増殖を示す特有な癌組織を形成する。本研究の目的は、癌幹細胞を基軸とし、犬の乳癌の病態発生機構の解明および癌幹細胞を標的とした新規治療法の基盤の構築である。それゆえ、生体で生じる癌組織を模倣した器官様構造(オルガノイド)および犬由来乳癌組織移植モデルマウスを作出し、これらの特性解析および薬剤スクリーニングを遂行する。乳癌幹細胞は、自己複製能を有する癌幹細胞を効率よく濃縮できるスフェアアッセイによる長期培養法、癌幹細胞マーカーを用いたフローサイトメトリー解析により同定する。本実験系はこれまでの研究で確立されている。一方、オルガノイド培養は上皮系腫瘍に極めて有用であり、かつ癌細胞の特性を失わず、微小環境因子依存性にオルガノイドを形成することができる。分取した乳癌幹細胞を市販されているオルガノイド培養液で培養し、形成されたオルガノイドは形態学的解析、腺上皮、筋上皮、骨、軟骨マーカーによる免疫組織学的解析を行った。2019年度は、外科切除材料を用いてオルガノイド培養系のシステムを立ち上げた。さらに、形成されたオルガノイドの免疫染色を実施し、腺上皮様および筋上皮様細胞の存在を欠検証した。現在、症例数を増加させ、オルガノイドの特徴解析およびオルガノイドバンクを進めている。
3: やや遅れている
本年度の研究成果はやや遅れている。オルガノイドの培養系は樹立できているが、研究材料である外科切除乳腺組織のサンプル数が少ない現状にある。
研究計画通り遂行予定である。昨年度に引き続き、オルガノイド培養を実施し、これらの特性解析を進める。さらに候補阻害剤のオルガノイド形成に与える影響、がん幹細胞の自己複製能に与える影響を検討する。
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