研究課題/領域番号 |
19K06392
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
近江 俊徳 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (40296091)
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研究分担者 |
土田 修一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (20217326)
落合 和彦 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (30550488)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血液型物質 / 組織血液型 / CMAH遺伝子 / 輸血 / 疾患 / イヌ / ネコ |
研究実績の概要 |
本研究は、我々がこれまで発見してきた血液型物質の遺伝的・血清学的知見を基盤に、小動物臨床において、より適正で安全な輸血医療体制の構築を継続するとともに、がん・感染症などの病態機序解明を目指し、赤血球膜表面に発現のみならず多くの組織・臓器に発現する組織血液型抗原を指標とした獣医学研究における基盤を形成する事を目的としている。研究2年目では、組織血液型抗原とシアル酸分子種の産生に関与するCMAH遺伝子との関連を調べた。イヌにおいては、腫瘍細胞(尿路上皮癌、線維肉腫、肝癌、肺癌、乳腺腫瘍)について翻訳領域の全塩基配列を決定し、これまで我々が見出したSNPと比較した。その結果、新規のSNPは見出されなかった。また、非同義置換SNPであるc.554A>Gを含め変異は認めれたもの腫瘍に関連付けられるものではなかった。一方で、ネコにおいては、乳腺腫瘍細胞や腎臓由来培養上皮様細胞の解析を行った結果、一般集団では極めて低頻度の非同義置換を伴うSNPが、解析検体で高頻度に認められ、腫瘍や細胞増殖との関連の可能性が示唆された。 当該遺伝子変異と血液型(シアル酸分子種)と関連解析では、これまでの継続研究として、低頻度分布のB型ネコやAB型ネコの血液収集を行い、CMAHのディプロタイプ(D)を同定した。その結果、これまで数例B型で見つかったD5,6型が初めてAB型に認められた。 B型とAB型は、共にNeu5Acを発現しており、Neu5Gcの発現の有無で分類されることから、当該ディプロタイプはD9型同様に抗体による血液型分類の境界上に位置すると考えられる。よって、より詳細に抗原の発現量との関連を調べる必要があり、現在のところD2型やD3型などB型特異的ディプロタイプには分類できないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目では、本研究のメインの課題である組織血液型抗原と疾患との関連解析を行いその研究基盤を形成する知見を得ることを目的としている。本年度は、コロナ禍の影響で十分な臨床サンプルが得られず、また学会発表等も行えなかった。その一方で、既存検体の研究を推進し、腫瘍細胞等と組織血液型を担うCMAH遺伝子の関連を解析した結果、ネコにおいて、腫瘍細胞等との関連が示唆されるSNPマーカーを見出した。まだ、解析例数は少ないものの、当該課題を推進するための重要な知見が得られた。従って、概ね当初の計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題の推進は、疾患関連解析では、がん罹患 や各種腫瘍細胞の核ゲノムを用いたCMAH遺伝子解析により、疾患特異的なSNP等の探索を継続的に実施する。特に、前年度に疾患関連候補SNPの可能性が示されたマーカーについて精力的にジェノタイピイングを実施する。感染症の研究では、コロナ禍であるが、引き続き関連病院との連携によりパルボウイルス感染症罹患個体の収集及び細胞膜表面に発現するシアル酸分子種を定量的に解析などを試みる。輸血関連については、イヌおよびネコの血液型判定、血液型物質シアル酸を産生するCMAH遺伝子のタイピング、新規変異遺伝子の同定、検査結果(輸血用血液選択)のフィードバックを継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、連携していた開業動物病院等から検体収集が十分でなかったことから、解析に使用する試薬等消耗品の購入が少なかった。また、国内外の学術集会が対面で実施されなかったことから、旅費等の支出がなかった。以上の理由により次年度使用額が生じた。これらは費用は、次年度新規・既存検体を解析するための試薬購入及び対面及びオンラインでの学会参加など、消耗品・旅費等に使用予定である。
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