研究課題/領域番号 |
19K06399
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 登喜子 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (60557479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / アジュバント / ワクチン |
研究実績の概要 |
毎年冬に流行するインフルエンザは、高齢者や乳幼児で重症化しやすく、多数の犠牲者を出す。インフルエンザ予防には主にワクチンが用いられているが、現行の不活化ワクチンは免疫原性が低い。アジュバントは、ワクチンと一緒に投与することによって、そのワクチン効果を高める物質である。しかしながら、アジュバントには副反応などの安全性に懸念が残る。最近、食品添加剤の一つであるサポニンにアジュバント効果が認められ、海外ではワクチンアジュバントとして認可された。そこで本研究では、安全性が高く、効果的な免疫賦活作用を持つ新規アジュバント候補物質を同定することを目的とする。 今年度は、ヒトでの使用が認可されている食品添加剤群に着目し、マウスモデルを用いて、現行ワクチンの効果を増強する化合物の探索を試みた。食品添加物のリストから、本研究に供する145個の化合物を選択した。現行のインフルエンザワクチンとそれぞれの食品添加物を、マウスに2週間間隔で2回免疫したのち、血清中のウイルス抗原に対する抗体価を測定した。アジュバントコントロールとしてはアラムを使用した。コントロールと同等かそれ以上の抗体価を示した化合物においては、ワクチン後のマウスに致死量のインフルエンザウイルスを感染させ、感染防御効果を調べた。その結果、現行ワクチンの効果を高める41種類の食品添加物を同定した。同定された化合物には、18種類の新規アジュバント候補、15種類のインフルエンザワクチンでの新規アジュバント候補(インフルエンザ以外のワクチンにおいて、既にアジュバント効果が示されているもの)、および8種類の既知のインフルエンザワクチンのアジュバント候補が含まれていた。 本研究で同定された候補化合物は、他のワクチンにも応用可能であり、食用の産業動物向けのワクチンに添加するアジュバント候補としても期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、安全性が高く、効果的な免疫賦活作用を持つ新規アジュバント候補物質を同定することを目的として、以下の研究を行う。1)自然感染とワクチンによる免疫記憶の誘導メカニズムの違いを調べるため、マウスモデルにおいて、インフルエンザウイルスの自然感染時と、ワクチン接種時における宿主応答との比較解析を行う。2)ヒトでの使用が認可されている食品添加剤群に着目し、マウスモデルを用いて、現行のインフルエンザワクチンの効果を増強する化合物のスクリーニングを行う。3)老齢マウスにおいて、ワクチン後の宿主応答解析とアジュバント効果の検証を行う。 令和元年度は、2)について、ヒトでの使用が認可されている食品添加剤群に着目し、マウスモデルを用いて、現行ワクチンの効果を増強する化合物の探索を試みた。まず食品添加物のリストから、本研究に供する145個の化合物を選択し、マウスモデルにおいて、食品添加剤のスクリーニングを行なった。その結果、現行ワクチンの効果を高める41種類の食品添加物を同定した。以上の結果が得られたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ワクチン接種後の宿主応答を体系的に捉えるため、マウスを用いて、自然感染とワクチン後の宿主応答の違いを調べる。ワクチン(アジュバントなし=現行ワクチン)を接種したワクチン群と、インフルエンザウイルスを感染させた自然感染群において、血清中のサイトカイン/ケモカイン量や抗体量などを測定するとともに、遺伝子の発現プロファイリングを行う。また、これまでに同定した有望な候補化合物については、上記と同様の手法を用いて、現行のワクチンと共にアジュバント候補物質を接種したマウスにおける宿主応答解析を行う。自然感染における宿主応答と類似の応答を引き起こす候補物質は、有望なアジュバントになる可能性が高い自然感染における宿主応答と類似の応答を引き起こす候補物質は、有望なアジュバントになる可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の下半期に予定していた研究が、新型コロナの影響により滞り、物品費および旅費として使用予定だった予算を使用できなかったため、次年度使用額が生じた。令和2年度は、これまでに同定したアジュバント候補化合物のメカニズム解析を行うため、マウスを用いた宿主応答解析を行う予定である。検討する候補化合物の数を増やすことによって、さらなる研究の発展を目指す。
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