現在の酪農現場では、乳牛における卵巣障害の増加や受胎性低下への対処策として、プロスタグランジンF2α(PG)やエストラジオール(E2)等の投与による発情・排卵誘起法へのニーズが高まっているが、卵胞発育を完璧に制御することは難しい。そこで本研究では、腟経路での投薬法により、持続徐放やパルス状徐放など生理的なホルモン分泌様式に匹敵する徐放パターンを作出し、卵胞発育や発情発現・排卵時期への影響を検討した。最終年度の実験では、申請者らの先行研究においてヤギにNK3受容体作動薬を投与した結果、LHのパルス状分泌を促進することにより、排卵時期が促進されることを示した。この結果を踏まえて、NK3作動薬を卵胞期あるいは黄体形成期に腟内投与し、卵胞発育、発情発現、排卵、黄体機能への影響を調べた。卵胞期においては、投与群のLH分泌、黄体退行後の発情時期などの観察項目に対照群と比べて明らかな変化は認められなかった。一方、排卵後の黄体形成期における投与では、黄体形成期のプロジェステロン濃度の平均値に有意な差は認められなかったものの、排卵後のプロジェステロン濃度の上昇時期が対照群に比べて投与群ではやや早まることが示され、NK3受容体作動薬の投与により黄体形成を促進する可能性が示唆された。
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