ニューカッスル病は伝播力が極めて強い鳥類の主要なウイルス性疾病である。本研究ではベトナムの家禽におけるニューカッスル病ウイルスの侵淫状況および本ウイルスに対する抗体保有状況を期間を通して継続的に検証した。最終年度は新たに当地で発育鶏卵接種により赤血球凝集活性を示す非鳥インフルエンザウイルスと判定された100株について輸入し、ニューカッスル病ウイルスであるか否か検証した。結果、ニューカッスル病ウイルスの新規の分離には至らなかった。研究期間を通して分離されたニューカッスル病ウイルスは1株にとどまった。本ウイルスの病原性に関与するF遺伝子の開裂部位アミノ酸配列は弱毒型であり、遺伝子配列の系統解析の結果からクラス1のGenotype 1bに分類された。また、本株の遺伝子は同Genotypeに属する中国の分離株と最も近縁であった。分離株数がわずかであった一方で、サーベイランス対象の家禽のニューカッスル病ウイルスに対する抗体陽性率は2.3%であった(18/800羽)。本結果から、当地の家禽においてニューカッスル病ウイルスは鳥インフルエンザと比較するとマイナーではあるものの維持されており、鳥インフルエンザウイルスと同様に中国の家禽と疫学的関連があることが示された。本研究サーベイランスでは鳥インフルエンザウイルスは低病原性/高病原性を問わず多数分離されたことから、鳥インフルエンザウイルスがより家禽に馴化している故に、ニューカッスル病ウイルスが主要な分離株となっていないと推察された。具体的な要因として、鳥インフルエンザウイルスが家禽の体内でニューカッスル病ウイルスの増殖に直接的に干渉し得る点や、鳥インフルエンザウイルス感染により家禽が免疫学的に非特異的抗ウイルス状態となっており、ニューカッスル病ウイルスが増殖しづらい環境になっている点が考えられた。
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