代表者が開発した常在マクロファージ(Mφ)の培養増殖法を応用して,マウス精巣間質細胞の混合培養により精巣間質Mφの培養増殖に成功し,前年度までに,精巣間質Mφはプロゲステロン(P4)合成・分泌能を有することを発見した。2021年度は,肺,脾臓と肝臓のMφにステロイド合成能がなく,精巣間質Mφに特異的であることを実証した。精巣間質MφのP4合成量はcAMPとβ作動薬により有意に増大し,M1分極化誘導剤で有意に減少すること,精巣間質Mφとライディッヒ細胞はギャップ結合を形成していること,精巣間質Mφにはテストステロン(T)受容体(AR)を発現していることも明示し,精巣Mφによるライディッヒ細胞のT合成制御機構の存在を示唆する結果が得られた。 この研究成果から「性ステロイド産生器官(生殖腺)のMφはステロイド合成能を有する」と仮説を立て,マウス卵巣を材料に検証した。卵巣細胞との混合培養により卵巣Mφの培養増殖に成功し,卵巣Mφにも性ステロイド合成分子・合成関連分子が発現していることを明示した。 BALB/cとC57BL/6マウス肺を材料に,肺細胞との混合培養により肺間質Mφの培養増殖に成功し,増殖させた肺間質MφにおけるM1型・M2型Mφへの分極化特性を検討した。(1)両マウスの肺間質Mφともに非常に高いレベルでarginase 1(M2分極化マーカー)を発現し,M1およびM2分極誘導時にも発現レベルは変化しないこと,(2)対照群ではiNOS(M1分極化マーカー)発現は認められず,M1分極誘導時に発現が誘導され,Balb/cよりもC57BL/6の肺間質Mφの方が短時間で強いiNOS発現誘導が起こること,従って,(3)M1分極誘導時にはarginase 1とiNOSを同時に発現する特性が認められ,肺間質Mφは単球由来の動員Mφとは異なる性質を示すことが明らかになった。
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