研究課題/領域番号 |
19K06407
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高野 友美 北里大学, 獣医学部, 教授 (20525018)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ノロウイルス / ウイルス性胃腸炎 / 動物疾患モデル / ネコ / 再感染 |
研究実績の概要 |
本研究では、ノロウイルスの再感染とその機序の解明を目的とする。毎年冬期にノロウイルス(ヒトノロウイルス)による胃腸炎の流行が報告されている。ヒトノロウイルスに対する予防薬および治療薬の開発には再現性の高い動物モデルが必要である。現在、ヒトノロウイルス感染症の動物モデルとして主にマウスを使用している。しかし、免疫機構を人為的に弱めたマウス以外では胃腸炎は確認されておらず、野外でのノロウイルス感染症を再現し得る最適な動物モデルとは言い難い。我々はネコノロウイルスを感染させた猫では胃腸炎症状を発症するとともに糞便中にウイルスを排出することを確認した。また、猫においてネコノロウイルス再感染の有無を確認したところ、再感染が抑制される可能性を確認した。2020年度は、過去に得られたネコノロウイルス感染猫血清から精製したIgGをネコに受身免疫した後に、ネコノロウイルス陽性糞便乳剤を経口投与した。その後、ノロウイルス再感染後の胃腸炎症状(嘔吐、下痢)の発現の有無、再感染前後の免疫動態およびウイルス遺伝子変異の有無について調査した。その結果、IgGを受身免疫した猫では胃腸炎症状の発症および糞便中へのウイルス排出が抑制される傾向が認められた。現在、これらの結果について詳細に解析しているところである。また、本研究を実行するにあたり、ネコノロウイルス遺伝子の量を測定できる市販の検査キットを同定した。現在、ネコノロウイルスのVP1に存在すると思われる中和エピトープの同定を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年計画で実施しているが、2年目において宿主を用いた動物実験を実施することができた。現在、その実験で得られたデータを解析しているところであり、期限までに何らかの形で公表できると思われる。また、本研究の副産物として、市販のキットでネコノロウイルス遺伝子を検出できることが確認された。これについては既に学術論文で公表した。以上を踏まえると、本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2年目にして宿主を用いた動物実験を実施することに成功した。今後は本実験で得られたデータを解析しつつ、科学的に更なる検証が必要な部分については予算の範囲内で補足する。本年度は本課題の最終年度であるため、早急に論文を作成し、本年度内に学術雑誌に投稿する。また、ネコノロウイルスのVP1蛋白質に存在する中和エピトープを同定するため、ペプチドとネコノロウイルス感染猫血清を用いたELISAを実施する予定である。
|