研究課題/領域番号 |
19K06417
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仁田 義弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (50829140)
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研究分担者 |
関崎 勉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70355163)
遠矢 真理 順天堂大学, 医学部, 助教 (20804694)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | レンサ球菌 / 選択培地 / 臨床細菌学 / 栄養要求性 |
研究実績の概要 |
選択培地の開発に先立ち,その性能を評価する上で必要となるStreptococcus属菌特異的PCRの開発をった。16S rRNA遺伝子領域のデータベースから,Streptococcus属菌共通領域を選定し,プライマーを設計した。Streptococcus属菌 27 菌種 42 株, Lactococcus 属菌 2 菌種 14 株, Enterococcus属菌 10 菌種 20 株,その他 ブタ の主要な病原細菌 12 菌種を供試して,設計したプライマーでPCRを実施したところ,Streptococcus pluraminariumを除く全てのStreptococcus属菌で標的遺伝子の増幅が見られたが,その他の細菌では増幅がみられなかった。Streptococcus pluraminariumは,近年,レンサ球菌属から分類上分けることが適当ではないかと疑義が出されているが,現状ではこれにも増幅することが求められるため,この菌種にマッチしたForwardプライマーを設計し,これを混合して使用することで,供試した全てのStreptococus属菌に増幅するPCRを開発できた。次いで,モデル細菌として,Streptococcus 5菌種5株,陰性対象としてEnterococcus 2菌種2株およびLactococcus lactis 1株を用いて,オムニログシステムで提供されるマイクロプレートを使用して155種類の抗菌薬や化学物質などの薬剤に対する感受性,塩濃度感受性,pH感受性を評価した。その結果,Streptococcus属の発育は阻害せずLactococcus属の発育を阻害する抗菌薬は18種類見つかったが,それらはEnterococcus属の発育は阻害せず,その他塩濃度およびpHを含めてもStreptococcus属菌選択培地に利用できる条件はみつからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画にあった選択培地の性能評価に必要なレンサ球菌全菌種に特異的なPCR方の開発は,ほぼ完成した。この成果を踏まえて,2020年度に予定していたレンサ球菌とその他の類縁菌との間の薬剤感受性や代謝特性の解析の作業を前倒しして進めることができ,当初次年度予定した計画の半分程度にあたる抗菌薬および塩濃度,pHに対する感受性について,8菌株を用いた成績をまとめることができた。その結果,本研究目的であるレンサ球菌用新規選択分離培地の開発が加速し,それを用いたレンサ球菌の生態解明を進めることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に使用した8株を用いて,さらにその特性評価を実施する。これにより菌種間の特性の違いに関する解析はほぼ完了する予定である。2020年度には,これらの特性評価成績を基に新しい選択培地を試作し,2019年度に開発したPCRを利用した評価と,培地成分の微調整も行い試作品を完成させる。また,既報のレンサ球菌用選択培地のなかで現在市販され入手可能な培地と既存のオキソリン酸+カナマイシン添加の選択培地にブタだ液試料などを接種し,発育する細菌に対してメタゲノム解析により実際にStreptococcus属菌がどの程度の割合で発育してくるか,その実態を明らかにする。2021年度は,野外試料を用いて,試作品の性能評価を実施し,必要ならば追加の微調整を行い,新しい選択培地を完成させるとともに,それを利用した開発した選択培地を用いたレンサ球菌の生態解明など,野外試料を使用した性能評価も実施する。
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