研究課題/領域番号 |
19K06419
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
尾崎 弘一 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80396332)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バクテリオファージ / APEC / ESBL / 相補的短鎖RNA |
研究実績の概要 |
小課題2として相補的短鎖RNAを用いた薬剤耐性菌の感受性化を評価する実験系を構築した。昨年度までに当研究室で保有するブロイラー由来の大腸菌からblaCTX-M2、blaCTX-M14およびblaCTX-M15とその上流配列をPCR増幅し、各々pMW219ベクターにクローニングした。これらのプラスミドを保有する大腸菌は第三世代セファロスポリンであるセフォタキシムに耐性を示すことを確認済みである。当該年度ではblaCTX-M-2遺伝子の、1)開始コドンから24塩基(A領域)、2)開始コドン上流のSD配列を含む24塩基(B領域)、3)SD配列と開始コドンを含む24塩基(C領域)、にそれぞれ相補的な短鎖RNAを発現するプラスミドを構築した。これらのプラスミドを上記のblaCTX-M遺伝子を保有する大腸菌に導入した。薬剤感受性の評価はセフォタキシムディスクを用いた阻止円の直径ならびに平板希釈法によるセフォタキシムのMIC測定により実施した。 ディスク試験において、A~C領域に対する相補鎖sRNA発現プラスミドを導入したblaCTX-M-2保有大腸菌は対照に比して11~16mm阻止円の拡張が観察された。また薬剤感受性試験ではいずれの相補鎖sRNA発現プラスミドの場合でもセフォタキシムのMICは1/16に減少していることが観察された。一方、blaCTX-M14または15を保有する大腸菌に導入した結果、薬剤感受性に変化がないことが観察された。これらの結果は、各blaCTX-M遺伝子に特異的な配列を持つ相補的短鎖RNAは耐性菌の薬剤感受性を増加させ、従来の薬剤が使用可能となる可能性を示唆していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度調達された農場由来のサンプルから順次農場由来のサンプルを収集して大腸菌ならびにファージの増幅を進めている。 ESBL産生大腸菌モデルの構築ならびに相補的短鎖RNAの発現による薬剤耐性菌の感受性化に一定の目途がついた。
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今後の研究の推進方策 |
農場由来のサンプル数を増やし、分離されたファージの集団が自家農場に由来する「大腸菌集団」に優位に溶菌活性を示すことを確認するとともに、この予防法に関する将来性を検証する。 ESBL産生大腸菌モデルに相補的短鎖RNA発現プラスミドを導入することで薬剤への感受性化である目途がついたため、次はこの相補的短鎖RNA発現ファージミドをM13ファージを使って大腸菌に導入可能か否かを評価する。また導入された大腸菌が本年度の成績と同様、薬剤に対して感受性化することをファージ感染菌の薬剤を含む培地中の増殖性を測定することで評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
獣医学会学術集会への参加旅費を申請当初計上していたが、ここ数年学会はWEBオンライン形式に変更されているためその分が繰り越しとして反映されている。最終年度に開催される学術集会もWEBオンライン形式で行われるため、当初計上していた旅費は実験遂行のための消耗品費並びに論文執筆時の校閲費に充当することを考えている。
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