この研究の目的は、日本国内でトリインフルエンザ感染がパンデミックに拡大した場合の準備として、また、他国でパンデミック感染が起こった場合の国際協力として、ニワトリに実用的で効果的なワクチンを接種する方法を研究期間内に開発すること、および、雛に免疫抑制を起こさせないワクチン接種法を開発し、養鶏場の現場でも容易に実施でき、かつ粘膜免疫応答で重要なIgA抗体を主とする効果的な免疫応答を起こさせる処方を研究期間内に開発することである。この課題を解決することで、今後の畜産領域に於いて、国内ばかりで無く、国際貢献として海外に技術提供できる学術的・かつ実用的なものとなると考えられる。この度、広島大学を定年退職する事となったため、研究の継続ができず、現在までの研究結果を報告する。 点眼免疫でIgA抗体産生に対してザイモサンのアジュバント効果があることが明らかとなり、ザイモサンを混合して抗原を噴霧することで、効果的に血清中の抗原特異的なIgA抗体の産生が起こることを確認した。また、IgM抗体からIgA抗体へのクラススイッチ機構が環状DNAの切り取りが行われずに起こるという、分子生物学的な機構も世界で初めて明らかにした。ニワトリのIgA抗体へのクラススイッチを誘導するサイトカインは、哺乳類とは異なってIL-2とIL-10であり、IL-5とIL-4は抑制的に働くという機構も明らかにした。しかしながら、遺伝子ノックアウトニワトリの作成までは行う事ができなかった。
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