研究実績の概要 |
当該年度は新型コロナウイルスの影響による研究活動の制限、ならびに研究代表者の所属機関の移動に伴い、当初予定していたウサギの肺塞栓モデルを用いた実験的検討は実施することができなかった。代わりに臨床研究として、犬の肺高血圧症の診断において有用性が期待されるエコー検査での右心房機能ならびに静脈形態の評価に関する検討を行った。右心房は肺高血圧症において拡大することが知られているが、大きさよりもその機能を評価する事が、より早期の肺高血圧症診断、あるいはより適切な重症度評価に繋がる可能性がある。そこでまずは心疾患を有さない犬を対象として、犬の右心房機能指標の正常値を確立し、国際学術誌においてその成果を発表した(Morita, Nakamura, et al. Am J Vet Res 2021)。なお、本論文の図が同誌の表紙に掲載されることとなったが、これは本研究成果が高い評価を得たことを示す1つの表れであると考えている。続いて、肺高血圧症を含む右心疾患を有する犬の臨床例を対象として、大静脈の形態をエコー検査にて評価し、肺高血圧症の診断ならびに重症度評価における有用性を検討した。その結果、正常では楕円形である後大静脈が、右心不全症例においてはより円形となることを明らかとした。この極めて簡便な指標が右心不全の発症と強く関連していることは臨床的に大きな意義をもつものであり、国際学術誌においてその成果を発表した(Fujioka, Nakamura, et al. J Vet Cardiol 2021)。
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