本研究課題において、鹿児島県出水平野に飛来後に死亡した野生ツル検体からウイルス(5591Scl株)を分離し、遺伝子解析の結果、本ウイルスはαヘルペスウイルスである事を報告した。次世代シーケンサーNextSeq500を用いて5591Scl株のゲノム解析を実施した結果、複数個所に長鎖の反復配列が認められたことから、これらの箇所では正確にゲノム配列が同定出来ていない可能性が考えられた。そこで、本年度はロングリード次世代シーケンサー(Oxford Nanopore GridION long-read sequencer)を用いた5591Scl株のゲノム解析を試みた。また、以前国内で分離されたツルヘルペスウイルスHino93-1株と5591Scl株のゲノム配列の比較も実施した。GridIONを用いたゲノム解析の結果、5591Scl株の反復配列箇所のゲノム配列が正確に同定された。Hino93-1株のゲノム解析の結果、5591Scl株と非常に高い相同性を持つことが明らかであったことから、出水平野の死亡ツルから分離された5591Scl株はツルヘルペスウイルスであることが同定された。さらに、本研究で得られたツルヘルペスウイルスのゲノム配列情報を基に、リアルタイムPCRによる遺伝子検出系の構築を試みた。その結果、ツルヘルペスウイルスが含まれるスワブ検体や臓器検体から本ウイルス核酸の検出が可能であったことから、本研究で構築したリアルタイムPCRは、臨床検体を用いたウイルスの迅速検出系として利用できることが示唆された。
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