研究課題/領域番号 |
19K06429
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
田村 恭一 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (00722282)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 犬 / がん / 骨髄由来抑制細胞 / 免疫抑制 / キナーゼ阻害剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、種々のがんにより誘導されるMDSCによる免疫抑制機構を調節しているシグナル経路を網羅的に解析し、がん種により異なると推測されるそのシグナル経路を阻害することにより種々の犬悪性腫瘍に対する新規治療候補薬を探索することを目的とした。 これまでの研究成果として、犬の骨髄単核球をGM-CSFおよびIL-6存在下で培養し、さらに株化腫瘍細胞培養上清を添加することにより、犬の骨髄単核球から効率的にCD11b+Gr-1+細胞を分化誘導できた。また、培養した細胞からフローサイトメーターを用いたソーティングによりCD11b+Gr-1+細胞を精製し、その機能を解析したところ、CD11b+Gr-1+細胞はMDSCに特徴的な機能であるArginase活性、NOおよびROSといった免疫抑制因子を有していた。このことから、犬の骨髄細胞からGM-CSFおよびIL-6を用いてMDSCを効率的に分化誘導できることが明らかとなった。さらに、骨髄細胞から分化誘導したMDSCは、添加する株化腫瘍細胞培養上清の種類により、その免疫抑制機能に相違が認められた。このことは、種々の株化腫瘍細胞により培養上清中に分泌される液性因子が異なっているためと考えられた。これらの結果は担がん生体において誘導されるMDSCががん種により異なる免疫抑制機構を有していることと類似しており、本研究により確立した犬の骨髄細胞を用いたMDSCの分化誘導法が今後の犬の悪性腫瘍に対する新規治療候補薬の探索に有用であると考えられた。新型コロナウイルス感染症の流行により、2021年度に予定していた研究計画が十分に遂行できなかったため、引き続き、本研究で確立した方法により、犬の骨髄細胞と種々の株化腫瘍細胞を用いてMDSCを分化誘導し、キナーゼ阻害剤によるMDSCのT細胞増殖抑制への影響を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の流行による大学の遠隔授業の準備および実習の分散化により、大学教育業務に多大な時間を要した。また、緊急事態宣言発令による大学への登校制限により、進行中の実験を一時中止することがあった。これらの理由により、実験を計画通りに進行することが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、2021年度に予定していた研究計画を十分に遂行することが出来なかったことから、当初2020年度および2021年度に予定していた実験を引き続き進めていく。具体的には、種々のがんにより誘導されるMDSCによる免疫抑制機構を調節しているシグナル経路を網羅的に解析することを目的として、キナーゼ阻害剤ライブラリーを用いてMDSCに対する抗免疫抑制効果を有する薬剤を探索する。実験には、これまでに確立した方法により犬の骨髄細胞と種々の株化腫瘍細胞を用いて分化誘導したMDSCおよび米国のSelleck社よりすでに購入している418種類のキナーゼ阻害剤を含むキナーゼ阻害剤ライブラリーを用いる。具体的には、分化誘導したMDSCと同一個体の末梢血T細胞を抗犬CD3抗体存在下で共培養し、培養中に0.1あるいは1μMの濃度でキナーゼ阻害剤を添加しMDSCによるT細胞増殖抑制を評価する。T細胞の増殖は細胞染色蛍光色素CFSEによる標識およびWST-8による発色測定により評価する。さらに培養上清中のIL-2およびIFN-γ濃度 をELISA法で測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルス感染症流行により、当初予定していた2021年度の研究計画を予定通りに遂行することが出来なかったため、未使用分が多く生じてしまった。 (使用計画) 2021年度に実施できなかった研究計画分を急ぎ行っていく。また、時間短縮のため、外注を利用することを検討する。
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