研究課題
本研究では,食品媒介性感染症として世界中で猛威を奮うカンピロバクターが,ヒト宿主への感染過程において顕す遺伝子発現並びに腸内細菌叢に係る動態を発症患者由来検体を研究対象としてプロファイル化し,患者疫学情報及び原因菌株のゲノム特性と融合させることで,本菌感染によるヒト病態発現の分子基盤に係る基礎知見の集積を図ることを目的として検討を進めた。令和3年度は、カンピロバクター食中毒事例検体を対象として、16S rRNA sequencing解析による腸内細菌叢のプロファイリングを行うと共に、原因菌株のWGS解析を進めた。更に、ヒト由来RNA及び細菌由来リボゾームRNA遺伝子を除去した上で、細菌のTranscriptome解析を進めた。腸内細菌叢解析の結果を前年度分をあわせて解析することにより、患者腸内細菌叢は検体間での多様性に富むが、本食中毒菌感染に由る、腸内細菌叢構成への影響は大きくはないことが確認された。食中毒原因菌株に係るWGS解析を通じて、同一事例の中であっても複数患者間で数十のSNPがみられることが確認されたほか、一部腸内細菌やphage由来と推察される遺伝子配列の挿入等が確認された。また、Transcriptome解析ではRNA解析結果を得ることができ、鞭毛構成遺伝子をはじめとする複数の遺伝子の発現変動を確認することができ、同遺伝子は培養細胞を用いたin vitro評価系においても発現亢進が認められたことから、本菌感染に伴う病態との関連性を有する遺伝子群であると結論づけた。
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