最終年度は、糖質代謝が始原生殖細胞の形成を制御する分子機構の解明 (i)、および始原生殖細胞の形成を制御する代謝経路の包括的特定 (ii)、を進めた。 (i) 糖質代謝が始原生殖細胞の形成を制御する分子機構の解明:申請者は前年度までに、糖質が、アセチルグルコサミンという代謝化合物に変換される代謝経路、およびその代謝物がタンパク質に付加するO-アセチルグルコサミン化が始原生殖細胞の形成に重要な役割を果たすことを見出していた。今年度は、糖付加修飾を受けるたんぱく質としてヒストンのメチル化制御因子や転写因子等、複数のタンパク質が始原生殖細胞において糖付加修飾を受けることを、始原生殖細胞のタンパク質抽出液を用いた免疫沈降法により見出した。また、これらのタンパク質の糖付加修飾はタンパク質の安定性を増強することを、見出し、分子機構の解明に迫った。 (ii) 始原生殖細胞の形成を制御する代謝経路の包括的特定:糖質代謝の他にも、始原生殖細胞形成に重要な役割を果たす代謝経路を特定するために、培養下で始原生殖細胞様細胞を分化誘導し、代謝状態に変化を加えることでその誘導効率の変化を調査した。その結果、セリン代謝を含む代謝経路の阻害において、始原生殖細胞の誘導が顕著に阻害された。また遺伝子発現解析の結果、その阻害の仕組みは糖質代謝の阻害とは異なることが示唆された。これを元に、この代謝経路が始原生殖細胞形成に寄与する仕組みの解明に取り組んでいる。
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