研究課題/領域番号 |
19K06439
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
遠藤 墾 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (40813936)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 減数分裂 / 細胞分化 / 精子形成 / 精巣 |
研究実績の概要 |
哺乳類の精巣内では、精子の元となる精原細胞が自己複製をしつつ、減数分裂を起こす精母細胞へと分化することで、精子生産が継続的に維持される。この調節は、精巣の恒常性の維持や、次世代へ子孫を残すために必要不可欠であり、本研究で得られる成果により、 精原細胞の体外移植技術の改良や、それに伴う遺伝子資源の凍結保存や家畜生産への貢献、ヒト不妊症の理解や治療法開発など、社会への幅広い波及効果が期待される。 現在、精原細胞がどのように減数分裂能を獲得するか、分子メカニズムは不明である。本研究ではマウスを用い、 減数分裂能に必要な機能遺伝子の同定やメカニズム解明を目指す。 具体的には、減数分裂開始因子への応答性の変化や発現する遺伝子群の解析や、発生工学技術を駆使して遺伝子改変マウスを作製し、減数分裂能に必要な機能遺伝子の同定とメカニズム解明を目的とした。 令和1年度は、精原細胞から精母細胞までの特性を網羅的に理解するための実験系の確立を行った。精原細胞から精母細胞までの分化過程の各細胞群を分離・回収することを目的とし、これには精巣組織切片からの形態的な細胞分離が可能なレーザーマイクロダイセクション法を用いた。レーザーマイクロダイセクション 法による一切片あたりの目的の細胞群の回収率を向上させるために条件検討を行い、短時間でより高品質なTotal RNAを回収する条件検討を行った。 また、(オンラインのデータベースや文献を参考としながら)分化型精原細胞で高発現する遺伝子群に着目し、ゲノム編集技術である CRISPR/Cas9法を用いて3系統の遺伝子欠損(KO)マウス作製を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、精巣組織切片からの形態的な細胞分離が可能なレーザーマイクロダイセクション法を習得し、一切片あたりの目的の細胞群の回収率を向上させるために条件検討により、短時間でより高品質なTotal RNAを回収することができた。 KOマウス作製については、CRISPR/Cas9法の技術習得を行い、3系統の遺伝子群全てにおいて、目的の産仔を得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、レーザーマイクロダイセクション法により回収した目的の細胞群についてRNA-Seq解析を行い、遺伝子発現パターンから、細胞の減数分裂開始因子への応答性や性質変化の理解を目指す。 また、作製した3系統のKOマウスについて、1系統ずつ表現型解析を行う。具体的には、KOマウスの妊孕性を交配で確認し、不妊となるKOマウス系統をスクリーニングする。その中で、精母細胞への分化異常や減数分裂不全を示すKOマウス系統について、 詳細な分子生物学的・組織学的解析を行う。 最終的には補助事業期間中に、減数分裂能獲得のための機能遺伝子の同定やメカニズムの解明を目指す。
|