研究課題/領域番号 |
19K06442
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
根建 拓 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50375200)
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研究分担者 |
宮西 伸光 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (80372720)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋 / エクソソーム / miRNA / 運動 |
研究実績の概要 |
近年、骨格筋は内分泌器官として認識されており、骨格筋より放出されるタンパク質・ペプチド(マイオカイン)は遠隔組織/器官に影響を与えうる因子と考えられている。一方、骨格筋から放出されるマイオカイン以外の因子については未だ不明な点が多い。本研究では、昨年度までに骨格筋から分泌される細胞外小胞の一種であるエクソソームに着目し、特に運動刺激に応じた動態変化や生理作用を明らかにすることを目的としていた研究を展開してきた。特に骨格筋から放出されるエクソソーム(筋エクソソーム)に内包されるmiRNAに着目し、次世代シークエンサーを用いて解析したところ、収縮刺激によって、そのプロファイリングが大きく変化することを見出した。 本年度は、上記解析によって同定した、収縮刺激依存的に筋エクソソーム内の含有量が減少する5種類のmiRNAのターゲット候補を探索したところ、特にmiR-Cのターゲット候補として骨格筋分化制御因子myostatinが含まれることが明らかとなった。そこで、昨年度に引き続き骨格筋細胞内でmiR-Cの機能阻害実験を行った結果、myostatinの発現が上昇、筋分化が抑制されることが明らかとなった。すなわち、骨格筋収縮によって、筋エクソソーム内のmiR-C含有量が低下、これが筋芽細胞に伝達されるとmyostatin発現量が増加し、筋分化を負に制御するという新しいメカニズムが存在する可能性が考えられた。さらに、骨格筋に収縮以外の刺激として暑熱刺激を負荷した結果、筋エクソソーム内のmiR-C含有量は逆に増加することも分かった。 以上、本年度は、収縮刺激及び暑熱刺激に応答して、筋エクソソーム内で含有量が変化するmiR-Cの機能解析を中心に研究を進め、その生理的意義を推定する段階に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋エクソソームの動態変化及び生理的意義の解明については、研究計画の予定以上に進捗している。筋エクソソームの糖鎖構造解析については、精製されるエクソソーム量がわずかであり、安定した研究結果を得ることが難点であったが、2020年度にパーメチレーション法を確立し、その問題解決に道筋ができた。一方、筋エクソソーム内タンパク質に関する研究については、COVID-19感染拡大による研究施設の使用制限によって研究が遅れているため、本年度はこれを中心に進める。さらに、運動によるマウス血中エクソソーム動態の解析についても予定どおり実施するための準備を進めている。以上、総合的に「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も研究計画に沿って、収縮依存的な筋エクソソームの動態変化およびその生理的意義に関する研究を継続する。特に筋エクソソーム内タンパク質に関する研究については、COVID-19による研究機関の制限によって研究が遅れているため、これを中心に進める。筋エクソソームが皮膚細胞に及ぼす影響については、リヨン第一大学、フランス国立科学センター(CNRS)との共同研究を予定していたが、海外渡航が難しい状況となったため、学内での実験系構築を行なった。これを用いて、エクソソーム依存的な真皮線維芽細胞のコラーゲンやヒアルロン酸産生、表皮角化細胞の増殖・遊走などを解析していく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、COVID-19感染拡大の影響で一部研究が実施できず、次年度使用額が生じている。遅延している研究(筋エクソソーム内タンパク質に関する研究)については、2021年度、可能な限り速やかに実施する予定としている。
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