研究課題
マウス人工多能性幹細胞から細胞増殖因子および細胞内シグナル伝達阻害剤を用いた培養条件下で分化誘導した胚体内胚葉及びそのオルガノイドを作製し、人工多能性幹細胞からがん幹細胞モデルを作製する手法(特許第6161828号、特願2015-85851)を用いてがん化誘導した。これらの細胞を免疫不全マウスに移植して、腫瘤を形成した。また、内胚葉系に分化した細胞を、引き続き成長因子及びシグナル伝達阻害剤により肝・胆管前駆細胞及び膵前駆細胞へと分化誘導し、それぞれの分化段階におけるオルガノイドを作製した。胚体内胚葉と分化誘導細胞及びそのオルガノイドにより腫瘤形成効率が異なることを見出した。また、マウス肝由来のモデルとして、マウス肝臓を細切した上で酵素処理し肝管を調整することにより肝・胆管系前駆細胞を含む分画を分離してオルガノイドを作製し、これを免疫不全マウスに移植して、肝・胆管系前駆細胞オルガノイド由来の腫瘤を形成した。マウスにおける腫瘤の形成は細胞分画により効率が異なり、種々の酵素処理条件及び分画サイズで検討した。オルガノイドの段階でがん化誘導を行い、免疫不全マウスでの腫瘤形成を試みている。肝がん幹細胞由来のアプローチとして、株化肝癌細胞培養系を非接着及び無血清の条件下に培養して胚様体を作製し、マトリゲルを用いてオルガノイドを作製した。肝癌に加えて胆管癌、膵癌由来の株化細胞培養系についても同様のアプローチを行ったが、オルガノイド形成は株化細胞種や分化度ごとに効率が異なることより、培養条件を検討した。この条件を利用して、臨床検体の癌組織由来のオルガノイド作成の条件設定を行った。
3: やや遅れている
マウスモデルの作製効率の向上及び安定化の条件設定に時間を要し、モデルの作製がやや遅れたため。
条件設定の調整で向上したマウスモデルを用いて、がん幹細胞の遺伝子発現・ゲノム/エピゲノム解析を加速する。株化細胞系及び多能性幹細胞から作製した幹細胞由来のモデルについて生物学・遺伝学的な比較検討を行う。
動物モデルの作製のための免疫不全マウスの使用及びその後の分子・細胞生物学的解析に要する試薬の使用が予定を下回ったためだが、翌年度分と併せた使用にあてる予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Br J Cancer
巻: 122 ページ: 1378-1390
10.1038/s41416-020-0792-z. Epub 2020 Mar 17