c-kit遺伝子を標的としたゲノム編集技術CRISPR/Cas9を小型霊長類実験動物コモンマーモセットの受精卵に注入して作出したc-kit遺伝子改変マーモセット(c-kit マーモセット)の解析を引き続き実施した。 前年度に引き続きc-kit マーモセット2匹の経時的な造血機能変化を血液細胞特異的マーカー抗体で染色して解析した結果、同年代の野生型マーモセット血液と大きな差は認められなかった。次にc-kitマーモセットが示す変異c-Kitタンパクのリン酸化能を解析するため、各変異c-Kit発現ベクターを構築して培養細胞へ導入し、その細胞融解液とリン酸化c-Kit抗体をもちいたリン酸化アッセイを実施した。前年度までに実験条件を確立し、リン酸化c-kit抗体1種類に対して検討を行った結果、オスc-kitマーモセットが示す変異c-Kitの一つでリン酸化能が検出された。本年度は更に5種類のリン酸化c-Kit抗体について実験条件を確立して検討した結果、オスc-kitマーモセットの示す変異c-Kitの一つで、4種類のリン酸化抗体でシグナルが検出された。オスc-kitマーモセットが示すもう一つの変異c-kitおよびメスc-kitマーモセットが示す変異c-kitに関しては、シグナルは検出されなかった。また生殖機能解析のためc-kitマーモセット体細胞よりPGC誘導実験を検討したが、うまく樹立できなかった。そこで、オスc-kitマーモセットの射出精子と野生型メスマーモセットの卵子をもちいた体外受精を行い、得られた受精卵を解析した結果、オスが示す改変c-kit遺伝子を持つ受精卵が認められた。またメスc-kitマーモセットに関しては、性成熟に達した2歳ごろより野生型オスとペアリングし、尿中プロゲステロン値をモニターすることで性周期が動いているかを検討したところ、性周期が動いていないことが確認できた。
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