研究実績の概要 |
1) 5ヶ月齢の成長ホルモン受容体欠損(GR-KO)ブタ8頭 [ホモの雄3頭, 雌1頭:ヘテロの雄1頭, 雌2頭:野生型 (WT) の雌1頭]の肝臓と腎臓を用いて、アンドロゲンで正に制御されているCYP2C33の発現量をreal time RT-PCRで測定した。ホモとWT/ヘテロ間で差は認められず、GHRを介したGHシグナルは両臓器のCYP2C33の構成的発現には関与していないことが示唆された。また、GHで制御されているInsulin like growth factor 1 (IGF1) のホモ個体の肝臓におけるmRNA量と血中IGF1量はWT/ヘテロに比べて減少することを確認した。 2) 5ヶ月齢のMeishan (M)、Landrace (L)、テストステロン(T)を投与した5ヶ月齢の去勢雄や雌の肝臓と腎臓におけるCYP4A24/25の発現量をreal time RT-PCRで測定した。CYP4A24/25発現の性差およびT投与効果は両品種とも腎臓のみで認められ、TによるCYP4Aの発現制御には臓器選択的因子の関与が示唆された。 3) ブタの薬物トランスポーターの遺伝子発現を2)と同様にして測定した。OATP1B3, OCT1, MDR1の肝臓における発現はMのみで性差が認められ、OCT1では両品種ともにT投与効果が認められたが、OATP1B3, MDR1ではMのみで認められた。BCRP, MRP2, OAT2の肝臓での発現には両品種とも性差は認められなかった。腎臓でのOAT1, OCT2の発現はMのみで性差が認められ、OAT1では両品種ともにT投与効果が認められるが、OCT2ではLのみで認められた。以上より、OCT1とOAT1の発現はT依存的であるが、OATP1B3, MDR1, OCT2の発現にはT以外の因子の関与が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
GHR-KOブタの生産に使用している母豚と雄豚の発情周期や精子に異常は認められないことから引き続き交配を行い、解析に必要なGHR-KOブタの生産を行う。5ヶ月齢における異物代謝酵素等の構成的発現におけるGH/GHRの関与を明確にすることを優先し、十分なホモ個体が確保できた場合にはテストステロン投与群と未投与群に分け、異物代謝酵素や転写因子の発現変動を比較することで、テストステロン制御におけるGH/GHRの関与を解析する。テストステロン投与実験は1ヶ月齢のブタで行うことを予定していることから、野生型のブタ品種を使用して、既報の方法 (Biochem. Pharmacol., 75, 1076-1082, 2008)により、テストステロン投与による血中テストステロン濃度の変動とGHおよびIGF1濃度の変動との関連性を解析し、テストステロンによる肝臓や腎臓における異物代謝酵素等の発現変動にGHやIGF1が関与する可能性の有無を検討する。 マウスの成長ホルモン(GH)依存的な性差発現に関わるとされるSTAT5b, BCL6, CUX2の内、ブタのCUX2発現がアンドロゲンで制御されていることを見出しており、これまで明らかにしてきたアンドロゲン依存性に制御されている異物代謝酵素の遺伝子発現とCUX2遺伝子発現との関連性を解析するとともに、関連性が認められた遺伝子についてはその遺伝子上流域にCUX2の結合配列が存在するか否かを調べて、CUX2がアンドロゲン依存性の発現制御に関与する可能性を検討する。
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