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2019 年度 実施状況報告書

新規1型糖尿病モデルを用いたアルツハイマー病態誘導メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K06466
研究機関福井大学

研究代表者

徳永 暁憲  福井大学, ライフサイエンス支援センター, 准教授 (70549451)

研究分担者 多田 敬典  国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 統合加齢神経科学研究部, 室長 (20464993)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードアルツハイマー病 / インスリンシグナル
研究実績の概要

糖尿病は末梢組織の機能障害だけでなくアルツハイマー病(AD)を含む認知症のリスク要因となることが報告されている。近年ではAD患者の死後脳解析から糖代謝調節を担うインスリンシグナルの破綻が脳内で観察されており、糖尿病に伴う認知機能障害の誘導に本シグナルが関わる可能性が示されている。ADは神経変性や脳萎縮を伴う不可逆的な疾患であり、発症後の認知機能低下を回復させることは困難であるため発症段階での作用機序の解明が求められる。本研究ではストレプトゾトシン投与によるインスリン欠乏性1型糖尿病モデル(STZ)マウスと、遺伝子改変により作製された次世代型ADモデルマウス(変異APPノックインマウス)を用いて、インスリンシグナルの機能変化が脳内環境および認知機能へ与える影響を精査することでADの発症メカニズムの理解に迫ることを目指す。
これまでのSTZマウスを用いた生化学的解析から、AD脳と同様にインスリンシグナルの構成因子AKT、GSK3βのリン酸化増進が観察された。加えて重篤な糖尿病を呈するSTZマウスでは発症後1ヶ月程度の短期間で顕著なシグナル異常が観察され、またSTZマウスの行動学的試験の結果から本シグナル異常と連動した認知機能の低下が確認された。一方で高インスリン血症を呈する2型糖尿病モデルマウス(db/db)の解析においても、脳内でインスリンシグナルが特異的に亢進することが見出されており、これらの結果から糖尿病とADの両疾患で見られる脳機能障害に共通する分子機構としてインスリンシグナルの関与が強く示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

STZマウスを用いたこれまでの解析からインスリンシグナルの構成因子AKT、GSK3βのリン酸化増進が観察されている。一方でインスリン受容体の活性化は見られておらずリガンド非依存的にリン酸化の増進が生じていた。またSTZマウスにインスリンを投与して高血糖症を緩和させた結果、脳内でのAKT、GSK3βのリン酸化が低減されたことから高血糖状態がシグナル異常の要因となることが示唆される。神経炎症に関する解析では、STZマウス脳においてIba1陽性ミクログリアの活性化が認められ、AD病変で見られるアストロサイトの集積は観察されなかった。STZマウスでの行動学的試験の結果からは認知機能の低下が確認されており、今後はADモデルマウスを用いて同様の検証を進める。

今後の研究の推進方策

ADの病理学的知見からAβおよびTau蛋白質の異常蓄積がその病変の構成要因であることが突き止められている。そこでADモデルマウスおよびSTZマウスを用いてアミロイドβ(Aβ)およびTau蛋白質の動態変化に関する解析を予定する。これまでにSTZマウス脳ではAKT、GSK3βのリン酸化亢進が認められているが、その他にも炎症性細胞の増加、ニューロン新生の低下等が観察されている。両タンパクはシナプス可塑性にも関わることから、本シグナル変化とADモデルマウスで観察される認知学習能障害との関連性について解析を行う。加えて、STZ投与により糖尿病を付加させた ADモデルマウスを解析することで、AD病態の誘導期でのシグナル促進・増悪化作用に関して精査する。

次年度使用額が生じた理由

今年度での解析を予定していたADモデルマウスの導入に期間を要し、年度内では必要な個体数が得られなかった。そのため今年度はSTZマウスの解析を主に進めることで上記の結果を得た。ADモデルマウスの組織学解析および行動試験に計画していた経費を次年度に繰越し、今後は糖尿病付加が認知機能へ与える影響についてADモデルマウスを用いて解析する予定としている。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 糖尿病に伴う脳インスリンシグナルの変容と認知機能障害との相関2020

    • 著者名/発表者名
      徳永暁憲、多田敬典、西道隆臣、斉藤貴志
    • 学会等名
      第67回日本実験動物学会総会

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公開日: 2021-01-27  

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