研究課題
セラミドを起点として,以後,各種の糖転移酵素によって様々に修飾されたスフィンゴ糖脂質をガングリオシドと呼ぶ.ガングリオシドは脳内の糖脂質の約1/3を占める主要な分子であり,ニューロンの成熟性にとって以下の機能を持つ.①神経突起形成,②軸索伸長,③ミエリン形成.先に我々は,ガングリオシ形成の始点部にあたるラクトシルセラミド(LacCer)合成には2つの糖転移酵素,β4ガラクトース転移酵素5(GT5)と6(GT6)がマウス脳内で必須である事を全脳で2つの酵素を欠損させたマウス(KOマウス)による解析から明らかにした(Yoshihara et al., 2018).この欠損マウスは離乳期付近で死亡してしまうことから,運動機能,認知機能,感覚処理などの解析を目的として終脳特異的KOマウスをEmx1 Creマウスを用いて作出した.このKOマウスは離乳期付近では低体重をともなう成長遅延を呈したものの,活動性,情動性,学習・記憶,注意機能,運動機能を測定する,いわゆるテストバッテリー方式の行動解析を実施することができた.このKOマウスは新奇環境における過活動性,注意機能亢進,恐怖条件付けの増強,運動学習の亢進などの明確な行動特性を持つことを報告した.活動性は,大脳皮質-線条体-黒質を主領域とする,いわゆる直接路,間接路を中心とした運動制御回路に依存すること,また注意機能に関しても各々がドーパミン(DA)系機能によって制御されることが知られている.そこでKOマウスにDAレセプター作用薬を投与した条件で,様々な行動解析を実施した.また,組織学的解析,培養系による検討を行うことで行動特性を規定する脳内の物質的変動を検討した.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
European Journal of Neuroscience
巻: 55 ページ: 1118-1140
10.1111/ejn.15602
Movement Disorders
巻: 36 ページ: 2036-2047
10.1002/mds.28512
Neuroscience Letters
巻: 743 ページ: 135563
10.1016/j.neulet.2020.135563
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 2039
10.1038/s41598-021-81515-x