研究課題
本研究では、ゲノム編集におけるノックイン効率の上昇を目的とし、相同組み換え効率の増幅因子の有効性について検討を行っている。本年度は、これまでの研究から最もノックイン効率上昇効果が高かった遺伝子について、作成したリコンビナントタンパクを用いてマウス受精卵におけるノックイン効率上昇効果の検討を行なった。まず、エレクトロポレーション法によるガイドRNA-Cas9タンパク質複合体(RNP複合体)およびssODN(一本鎖オリゴドナーDNA)の導入条件の最適化を行った。この条件に加え、30ng/ulの濃度でリコンビナントタンパクを添加しエレクトロポレーションを実施したところ、受精卵が全て全滅する結果となった。そこで、添加するリコンビナントタンパクの濃度条件の検討を行った。その結果10ng/ul以下にすることで、やや発生率が低下が見られたものの生存胚が得られることが判明したためこの濃度で実験を進めた。リコンビナントタンパクおよびコントロールをそれぞれRMP複合体とともに導入し、胚盤胞期まで培養した後にゲノムを回収、PCRによる遺伝型判定を行った。その結果、コントロールと比較してノックイン効率に顕著な変化は認められなかった。これは、ssODNを用いた一本鎖DNA修復(SST-R)においては、マウスES細胞で観察されたターゲティングベクターを用いた相同組み換えとは異なる応答性を示していると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度は予定通り、マウス受精卵におけるssODNを用いたゲノム編集の際の相同組み換え効率増幅因子の効果を検討した。COVID-19による緊急事態宣言、また研究代表者の異動など研究の進捗に大きな影響を与える可能性があったものの、その影響は最小限に留められ、おおむね順調に進展したと言える。
マウスES細胞におけるノックイン効率増幅因子の効果の検証に加え、本年度はマウス受精卵における効果を、リコンビナントタンパクを用いた研究から明らかにした。この結果、ssODNを用いた一本鎖DNA修復(SST-R)には顕著な効果が認められないと考えられた。そのため、マウス受精卵におけるノックイン効率上昇に寄与することが期待される低分子化合物についてさらに検討を進めることとする。なお、本年度途中から研究代表者の所属変更があったため、引き続き研究環境のセットアップを行う。
本年度は、COVID-19の影響により実験実施に支障を来したこと、加えて年度途中に研究代表者の異動があったことなどから当初予定よりも大幅に物品費の執行額が少なくなった。更に予定した出張は全てキャンセルされ、旅費の執行はなかった。本年度実施できなかった実験は新しい研究環境で次年度に実施し、物品費を使用する。旅費に関しては使用の見通しは立っていない。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件)
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