研究課題
本研究では、ゲノム編集におけるノックイン効率の上昇を目的とし、相同組み換え効率の増幅因子の有効性について検討を行っている。令和元年度はノックイン効率上昇効果が期待される遺伝子を、マウスES細胞において強制発現させることでノックイン効率の上昇が認められることを実証した。令和2年度はマウス受精卵においても有効であるかを検討したものの、マウス胚発生に対して毒性が高く、ノックイン効率上昇効果の検討には至らなかった。本年度は、昨年度までの結果を踏まえ、ノックイン効率の上昇が期待される低分子化合物2種について検討を開始した。まず、マウス受精卵を用い、低分子化合物の胚発生に及ぼす影響について検討を行った。その結果、先行研究から培養細胞においてノックイン効率上昇効果が見込まれる濃度(低分子化合物A;1uM、低分子化合物B;1uM)においては発生率に影響がないことを確認した。次に、エレクトロポレーション法によってガイドRNA-Cas9タンパク複合体及びssODNをマウス受精卵に導入し、直後から低分子化合物A及びBを含む培地中で培養することで、そのノックイン効率に与える影響を解析した。導入後、3ないし4日後に受精卵を回収、ゲノムDNAを抽出した。PCR法により標的部位を増幅した後、PCR産物の制限酵素断片長多型(RFLP)解析により、その遺伝型の判定を行った。その結果、低分子化合物Aの添加時にはノックイン効率の変化は認められなかった。一方、低分子化合物Bを添加群においてはノックイン効率が非添加群と比較して有意に上昇していることが明らかになった。本研究によって、ゲノム編集におけるノックイン効率の評価システムをin vitro 及び in vivo において構築した。この評価システムを用い、マウスES細胞及び受精卵においてノックイン効率を上昇させる遺伝子及び低分子化合物を見出すことに成功した。
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九州実験動物雑誌
巻: 37 ページ: 3-7
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