研究課題
結膜炎による眼の痒みの病態機序と神経基盤の理解のため、前年度まで齧歯類ラットとマウスを用いた解析を行い、眼の痒み誘発時の掻き行動の解析法の確立を行ってきた。またラットにおいて、眼の痒み誘発時に活性化する脳領域の探索を行い、下部延髄における神経活性の増加とガストリン放出ペプチド(GRP)受容体発現細胞の関与を見出してきた。今年度は作出したGRP受容体遺伝子改変マウスを用い、マウスのキャラクタライゼーションを行い、その後、眼の痒みの伝達におけるGRPおよびGRP受容体の機能解析を実施した。その結果、ラットと同様にマウスにおいても、眼の痒みを伝達する三叉神経知覚系におけるGRP受容体が眼の痒みの伝達に関与する可能性が見出された。また、齧歯類における痒み閾値について、ラットとマウスの種差のみでなくマウス間の系統差を明らかにするために、多様な行動表出を行うことが知られている野生型由来マウス系統と一般的な実験系統であるC57BL/6系統との比較を行った。その結果、痒み誘発物質ヒスタミンに対する眼の痒みの感受性がマウス系統間においても大きく異なることが示唆された。以上から、結膜炎による眼の痒みを抑えるための中枢制御領域として、下部延髄がひとつの重要な拠点であることが分かり、またこの領域におけるGRP受容体発現細胞の活性を抑えることで、眼の痒みを制御できる可能性が示唆された。また、ヒトに近い結膜炎掻痒症の病態の理解に、野生由来系統マウスが新たなモデルになりうることが示唆された。
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